展覧会は様々な角度から応挙の画業に迫る。会場入口で展示されている《元旦図》(18世紀・江戸時代)は、初日の出を見る袴姿の男が後ろから描かれている。男は応挙自身の姿とも目されており、多くの後進を育てたその志が、背中で語られていると見ることもできる。

《夕涼み図》(18世紀・江戸時代)は、多くの人が抱くであろう、精緻で迫力のある応挙のイメージとはまた一味違ったものだ。夏の暑い時期なのだろう、裸で団扇を仰ぐ男の姿は、簡略ながらもしっかりと身体のフォルムをとらえた線で描かれている。本作は北三井家4代の高美またはその孫である高祐を描いたと言われており、応挙と三井家の親密さをいまに伝える。

《富士図》(1792・寛政4)は、墨の濃淡のみで富士の山頂から裾野にかけてのシルエットを表しており、さらにはたなびく雲も同様に表現している。応挙が繊細な線表現だけでなく、面的な濃淡での表現にも興味を持っていたことがわかる作品だ。

このように、本展の冒頭ではこれまで広く共有されてきた応挙像とはまた違った、新鮮な一面を提示してくれる作品がそろう。



















