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「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」(神戸市立博物館)開幕レポート。20年ぶりに日本公開される名画とゴッホの軌跡をたどる【4/4ページ】

 都会での生活に疲弊し、心身の限界を感じていたゴッホは、1888年2月、南仏プロヴァンス地方のアルルへと移住する。春の訪れとともに彼は澄み切った大気と鮮やかな色彩に魅了され、この地を浮世絵版画を通じて憧れ続けた「日本」と重ね合わせた。アルルの自然を、鮮烈な色彩の対比をもって描き出すことに情熱を傾けたのである。

 第5章「アルル時代」では、この時代を代表する《夜のカフェテラス(フォルム広場)》が展示される。深い青の夜空と黄色い灯りに照らされたカフェの対比は、従来の西洋絵画が黒や灰色で描いてきた夜のイメージを一新した。ゴッホは実際にアルルの街頭に立ち、目の前の光景をカンヴァスに写し取ったとされる。構図には、江戸の浮世絵師・歌川広重が描いた月夜の景観からの影響も指摘されている。

展示風景より、フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス(フォルム広場)》(1888年9月16日頃) キャンバスに油彩 80.7×65.3cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

 「《夜のカフェテラス》は、夜景に対する特別な思いと大胆な挑戦が込められた作品です。短い生涯のなかでももっとも幸福だった時期を象徴しているといえるでしょう」と塚原学芸員は強調する。

第5章の展示風景より、左はフィンセント・ファン・ゴッホ《バラとシャクヤク》(1886)
第5章の展示風景より、左はフィンセント・ファン・ゴッホ《石膏像のある静物》(1887後半)

 なお、神戸市立博物館では、本展に続きアルル時代から晩年までを紹介する第2期を、2027年2月から5月頃に開催予定である。注目作として、オランダの至宝と称される《アルルの跳ね橋》が出品される見込みだ。さらに本展は福島県立美術館(第1期 2026年2月21日~5月10日/第2期 2027年6月19日~9月26日)、上野の森美術館(第1期 2026年5月29日~8月12日/第2期 2027年10月~2028年1月頃)へと巡回する予定であり、全国のファン・ゴッホ愛好者にとってまたとない鑑賞の機会となるだろう。

編集部