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「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」(神戸市立博物館)開幕レポート。20年ぶりに日本公開される名画とゴッホの軌跡をたどる【2/4ページ】

 1881年、28歳のゴッホは親戚で画家のアントン・マウフェの指導を受け、本格的に油彩や水彩を学び始めた。社会問題への関心も深く、街の景観や労働者を描いた素描を重ねることで、画家としての技術を自ら培っていった。1884年には両親の暮らす南部ニューネンに移り住み、農民たちと生活をともにしながら、その素朴で実直な姿をとらえた作品に挑んでいる。

第2章の展示風景より、左はフィンセント・ファン・ゴッホ《テーブルにつく男》(1885)

 第2章「オランダ時代」で紹介される《麦わら帽子のある静物》(1881)は、黒いリボンのついた黄色い麦わら帽子やパイプ、陶器、布切れなど、多様な質感を描き分けた習作であり、画家としての基礎を積み上げていった跡がうかがえる。また、《ニューネンの古い塔》(1884)は、重い空の下に立つ塔を描いた作品で、ヤーコプ・ファン・ライスダールやジョン・コンスタブルら過去の風景画家の伝統を意識した構図が見て取れる。さらに、《白い帽子をかぶった女の頭部》《パイプをくわえた男の頭部》など「頭部」シリーズ8点は、後の代表作《ジャガイモを食べる人々》へとつながる重要な試みとして位置づけられる。

第2章の展示風景より、右はフィンセント・ファン・ゴッホ《麦わら帽子のある静物》(1881)
第2章の展示風景より、右はフィンセント・ファン・ゴッホ《ニューネンの古い塔》(1884)
第2章の展示風景より、右はフィンセント・ファン・ゴッホ《白い帽子をかぶった女の頭部》(1884-85)

 ニューネンでの生活は経済的に厳しく、周囲との摩擦も少なくなかったが、それらを糧にしながら、ゴッホは画家としての表現力を独自に切り拓いていった。

第2章の展示風景より、左はフィンセント・ファン・ゴッホ《秋の風景》(1885)

編集部