写真家の岩根愛は、ハワイと福島を巡る盆踊りの関係に着目した作品を展示している。かつてサトウキビ労働者としてハワイに渡った日本人は福島県の出身者が多かったという。その労働者たちが伝えた福島の盆踊りが、いまなおハワイでは受け継がれているのだ。
作品には、かつてそこに存在していた労働者の家族写真が、亡霊のようにサトウキビ畑に投影されている。そこからつながる盆踊りのパノラマ写真は、あたかもいまは亡き存在や記憶を弔っているかのようだ。

丹羽良徳は、2012年にロシアのモスクワ現代美術館で開催された展示にあわせ、滞在制作を実施。崩壊したソ連の残像を追うドキュメンタリー映像《モスクワのアパートメントでウラジミール・レーニンを捜す》を発表した。現代を生きる人々は、どのようにレーニンをとらえているのか。丹羽のインタビューに応じた現地の人々の様々な反応にも注目してほしい。

アーティストの尾花賢一と文化人類学者の石倉敏明がタッグを組んで展開するのは、群馬県北東部にある赤城山にまつわる伝承をもとにしたストーリー性のある作品だ。会場では、階段の空間を用いて「赤堀道元と娘の話」の物語をなぞることができる仕掛けとなっている。階段を下りながら娘の身に起きた出来事をたどるうちに、あたかも異界に踏み込んでしまったかのような体験ができるだろう。

丸木位里・俊による「原爆の図」シリーズは、1945年広島に投下された原爆によって被害を受けた人々の姿を、全15部に渡って描いたものだ。今回展示されている第1部は、生きながらにして死者の姿をしている人々と猫がとらえられており、その姿はタイトルにもあるように「幽霊」と喩えられた。戦後80年を迎えた今年、遠い昔であるかのような過去の日本に、この幽霊が確実に存在していたという事実を、改めて心に刻む必要があるだろう。




















