土地の歴史や記憶に焦点を当てた作品もあれば、最新のテクノロジーに見られる、現代そして未来のゴーストの姿を想起させるような作品も紹介されている。
例えば、新平誠洙はポートレートを生成AIに学習させ、その過程で生じる異形の状態を画家の伝統技法を用いて描き出している。実在しない人物の肖像画を描き続けながら、新平は「人が描くこと」「AIが描くこと」そして「描くことの意味」についてまでも思考を巡らせているかのようだ。

山内祥太は2週間の滞在制作を経て、同展のための新作を発表している。アーツ前橋の吹き抜け空間を活用して展示される《Being...Us?》では、人類が姿を消した未来で、未知の生物たちがこの地にいたであろう人間の姿を想像している。あたかも遺跡のような場所に佇む未知の生物は「未来のゴースト」と言えるかもしれないし、その生物が想像するのは人間という「過去のゴースト」かもしれない。

会場のもっとも広い地下スペースで展示を行うのは、アメリカ・ニューヨーク出身で、実験的ヴィデオ・アーティストの先駆者としても知られるトニー・アウスラーだ。実体のないものに関心を持ち、心霊現象の資料などを個人的に収集もしているというアウスラーは、この空間に4つの作品を点在させている。プロジェクションを用いて投影される巨大な目や男女の不安げな表情。これらに共通するのは、様々な示唆に富んだアプローチでありながらも、どこかユーモアを感じさせるといった点だろう。


開幕に先立ち、南條は「不透明なことの多い現代社会。そういった不安のなかで未来を見つめようとするも、昔の記憶やかつてのシステムが失われていく。そういった現象も“ゴースト”という言葉に内包した」と語る。
新時代の到来とともに失われていく風習、忘れられていくかつての傷跡。発展してゆくテクノロジーと、そのなかに潜む空さ。我々の日常や営む世界に存在するちぐはぐな状態と割り切れない感情は、どのような場面にも存在することを、同展は伝えてくれている。そういった状態を受け入れつつ、少しずつそれらと向き合ってみることが、新たな可能性を見つける糸口となるのかもしれない。



















