「GO FOR KOGEI 2025」開幕レポート。「工芸的なるもの」を軸に「工芸」そのものを問い直す【6/7ページ】

 「スタジオあ」の隣にある「KAI」も会場のひとつ。ここは三浦による「宴KAIプロジェクト」のギャラリーでもある。「宴KAIプロジェクト」は、三浦を中心に、大工や木工、紙、竹など多様な素材を扱う職人たちと協働し、それぞれの素材に特化した新たな「ものづくり」を実践する取り組みである。

 今回は本芸術祭の会場の1つとして使用されており、ここにはガラス彫刻作家の寺澤季恵の作品が展示されている。

 寺澤は、主に吹きガラスの技法を用いて「生命」をテーマに作品制作を行う。圧倒的な存在感を放つ《生生2》は、重さ約300キログラム。不気味さも感じさせる本作は、「生」を美しさのみで語るのではなく、腐敗や死といった側面からも捉え直すという姿勢の表れだ。息を吹き込んでつくる吹きガラスの制作過程を、寺澤は「祈り」と表現する。

展示風景より、寺澤季恵《生生2》(2024)

 「KAI」から少し登った場所にある「KAI 離」へ会場が続く。こちらは先ほどの「宴KAIプロジェクト」で生まれた作品を収めている三浦のストレージだ。

 現在京都の「六角屋」の代表として、建築の企画・設計・デザイン監修を行う三浦は、地域づくりのプロデュースにも取り組んでいる。「KAI離れ」は、通常一般公開されていない場所だが、お風呂、芸術鑑賞、お茶の3要素をあわせて客人をもてなす「淋汗茶湯(りんかんちゃのゆ)」という文化を再現するといった試みも行っている。

展示風景より、「KAI 離」の様子

 そんな会場で作品を展開するのは、上出惠悟。上出は、1879年創業の九谷焼窯元・上出⻑右衛門窯の後継者として、九谷焼を現代に伝えている。いっぽう美術作家・画家としても活動しており、油画や水墨画、瓷板画、磁土を用いた彫刻的作品など多様な技法を用いた表現に取り組んでいる。

 今回は、三浦が設えた空間のために新しく制作した障壁画が展覧される。金沢城の向かいにある、かつて人々が入山することを禁じられた「卯辰山」にまつわる作品は、1階と2階で見ることができる。それぞれ油画と水墨画という技法の異なる作品が展示されており、上出の表現の幅広さを感じられる構成となっている。

展示風景より、上出惠悟《卯辰山望湖台》(2025)
展示風景より、上出惠悟《夢の香》(2025)

編集部