「GO FOR KOGEI 2025」開幕レポート。「工芸的なるもの」を軸に「工芸」そのものを問い直す【5/7ページ】

東山エリア

 金沢を代表する観光地「ひがし茶屋街」がある東山エリア。江戸時代末期から明治時代にかけて建てられた茶屋様式の町家が多く残されており、その町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。かつては様々な職人が工房の軒を連ねて、制作を行っていた土地でもある。このエリアでは7組のアーティストが作品を発表している。

 SKLoでは、コレクティブアクションの作品が展覧される。コレクティブアクションは、美術家であり、自然布の蒐集家・研究家として知られる吉田真一郎と、本芸術祭のアーティスティックディレクターでもあるキュレーターの秋元雄史によって結成されたアーティストコレクティブ。 

 本展では、吉田がこれまでに蒐集した自然布のなかから、大麻布に焦点をあてたインスタレーションを展開している。テーマの「1948」は、日本国内で大麻取締法が制定された年号であり、かつて全国各地で実施されていた大麻栽培が、この年以降急速に衰退したという歴史が背景にある。

展示風景より、《無題》(年代不明)

 建築家・三浦史朗による設計で生まれた「スタジオあ」では、2名の作家の作品が展示されている。

 会場に入ってまず目に入るのは、大きな桶と藁でできた《木桶と茅葺き屋根の茶室》。この作品は、中川周士と相良育弥のコラボ作品だ。中川は、重要無形文化財保持者でもある父・清司に師事し、室町時代から続く伝統的な桶づくりを行いながら、その技術を用いた作品づくりにも挑戦している。

 本作は、木桶を建築に取り入れることに挑戦し制作されたもの。大きな木桶の中に畳が敷かれており、来場者は中に入ることもできる。

展示風景より、相良育弥+中川周士《木桶と茅葺き屋根の茶室》(2025)

 そんな茶室に藁葺き屋根をつけたのが、藁葺き職人の相良。普段は、伝統的な⺠家や文化財の屋根葺きから現代的な内装や装飾まで幅広く手がけており、昨年はLOEWE Craft Prize 2024でファイナリストにも選ばれている。

展示風景より、相良育弥+中川周士《木桶と茅葺き屋根の茶室》(2025)、中から見た様子

 そんな茶室を前に、実際にお茶を楽しむ体験を展開しようと企画されたのが「『スタジオあ』茶会」。中川が制作した茶杓や柄杓、桑田卓郎の茶碗を使って点てたお茶をいただくという、ここでしかできない体験ができる。

会場風景より、「『スタジオあ』茶会」の様子

編集部