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「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010」(国立新美術館)開幕レポート【3/5ページ】

 本展では章立てに「レンズ」という言葉を用いて、各テーマごとの作品に切り込んでいる。レンズ1「過去という亡霊」は、戦後生まれのアーティストたちが、戦争や核のトラウマ、植民地支配の記憶といった課題に対してどのように向き合い、作品へと昇華してきたのかを探るものとなっている。

レンズ1「過去という亡霊」展示風景より、奈良美智による作品群。ベトナム戦争で米軍が使用した「枯葉剤」にちなんだような膨れ上がった頭部の子供や、ナイフを手に持った子供などが描かれている
レンズ1「過去という亡霊」展示風景より、ヤノベケンジ「アトムスーツ・プロジェクト」(1997)の作品群

 例えば、ヤノベケンジの「アトムスーツ・プロジェクト」(1997)は、1986年の原発事故によってゴーストタウン化したチェルノブイリ(旧チョルノービリ)に自作の防護服を纏って足を運び、写真撮影を行うといったものだ。映画やゲームで見られるようなSFチックな終末世界が、「リアル」であることを示している。これは、1995年に起こった阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件にも通ずる経験と言えるだろう。

レンズ1「過去という亡霊」展示風景より、手前は照屋勇賢《結い、You-I》(2002)、奥は下道基行「torii」シリーズ(2006-12)
レンズ1「過去という亡霊」展示風景より、会田誠《美しい旗(戦争画RETURNS)》(1995)

編集部