グローバル化が進むなかで、アーティストたちはいかに他者と対話を行い、共生していくことができるのかという課題に取り組んできた。レンズ3「コミュニティの持つ未来」では、アートマーケットとは一線を引いた、市井の人たちとの関わりあいから生まれたアートプロジェクトを取り上げている。



小沢剛、陳劭雄(チェン・シャオション)、ギムホンソックの3人によるアーティスト・コレクティヴ、西京人による《第3章 ようこそ西京に──》(2008)は、架空の東アジア都市「西京」を様々な創作を通じて探究。2008年当時に開催されていた北京オリンピックに応答するかたちで、独自のオリンピックが企画された。身近な日用品などでつくられるユニークな競技やそのアイテムは、国家の権威に成り下がった「世界平和の祭典」を風刺しているようでもある。クスリと笑える要素のなかに絶妙なスパイスが隠されている点が魅力的であると感じられた。



日本における著名な現代アーティストたちの個人の活動やその功績について語られる場面は多いものの、彼ら/彼女らを取り巻いていた社会状況を様々な文脈から俯瞰することができる機会はそう多くない。本展の3つのレンズからこの時代を覗き見ることで、この大きな転換点とも言える時代における「日本の現代美術の多面性」にあらためて気づくことができるだろう。



















