誰かがつくり出した「枠組み」について改めて考える
展覧会初日に行われたアーティストトーク(登壇者=マヤ・エリン・マスダと清水知子[東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授])では、マスダがこのテーマに行き着いた経緯についても語られた。「当初はSFCでロボティクスを学んでいたが、そのうち、自己完結してしまう機械の在り方に嫌気がさした。ロボティクスのなかにケアの関係(共依存)を持ち込んでみたのがきっかけだった」(マスダ)。
また、清水は「クィア・エコロジー」について考えるにあたって「『痛みが他者でなくなるとき』の『痛み』とは何か」「『自然』とエコロジーをめぐるパラドクス」「惑星的ケア:アンダーコモンズの世界と感性術」といった3つの観点を提示。人為的に都合よく定められた「人間」「自然」という枠組みについて考えるきっかけを参加者に共有した。

マスダのなかで一貫したテーマとして表れる「自然」と「人為」の狭間で生きざるを得ないこと、そして「毒性」「痛み」という共通点から生じうる新たな関係構築の可能性。タイトル「痛みが他者でなくなるとき」にも表されているように、本展は既存の枠組みを冷静に受け止めながらも、いかにそこから新たな関係性を築くことができるかといったマスダならではの提案が投げかけられている。



















