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「周辺・開発・状況 — 現代美術の事情と地勢 —」(下瀬美術館)開幕レポート。東アジアの記憶をつなぎ合わせる「現在」【9/10ページ】

 リサーチの成果を取り入れつつ、テキスタイルや陶芸を融合させたインスタレーションを展開してきた遠藤薫。出展している巨大なインスタレーション《とるの・とるたす(旅と回転)》は陶芸の歴史を多面的にリサーチすることで生まれたものだ。

展示風景より、遠藤薫《とるの・とるたす(旅と回転)》(2025)

 遠藤は旅の御守りとされた宮島の砂を使った縁起物「御砂焼」をリサーチ。さらに豊臣秀吉の朝鮮出兵によって連れてこられた朝鮮の陶工の歴史にも着目した。ほかにも、第二次世界大戦末期に鉄不足のために自決用に市民に配布した陶器製の手榴弾や、江田島で牡蠣殻を釉薬にして陶器をつくる沖山工房などを調査し、作品へと反映している。

展示風景より、遠藤薫《とるの・とるたす(旅と回転)》(2025)

 会場には牡蠣養殖のための筏とともに陶器が複雑に配置され、陶器の歴史のダイナミズムが感じられる。加えて、器がつくられた土地の物語も作品の様々な場所に染み込んでおり、訪れた人の興味を掻き立てる。

展示風景より、遠藤薫《とるの・とるたす(旅と回転)》(2025)

編集部