いっぽう、マーク・マンダースは、言葉や言語、詩に対する関心を基盤に、立体作品や書籍、インスタレーションなどを通じて時間というテーマを問いかける作品を発表してきた。その作品は、時間が凍結したかような張り詰めた空間をつくり出し、観る者に不安定な感覚をもたらす。
本展では、2体の像が鋼のタイルのうえに対峙するかたちで展示されている。ひとつは、同館所蔵の《椅子の上の乾いた像》(2011-15)で、タイトルが示す通り、椅子に置かれた乾燥してひび割れた像が特徴的。もうひとつの《椅子の上の像》(2011-15)は、完成したばかりのように見え、粘土の少し湿った質感が印象的だ。
両方の像の目は伏せられ、まるで独自の世界に浸っているかのように見える。鋼のタイルは、マンダースが高校生の頃に感銘を受けたというカール・アンドレの作品に影響を受けており、その影響がマンダースの作品にどのように反映されているのかを感じ取ることができる。また、本展では、マンダースの作品に見られる要素を手がかりに、グリッドや時系列反復といったテーマを扱ったアグネス・マーティンやドナルド・ジャッドの作品もあわせて展示されている。
マンダースの展示を担当した鎮西芳美はこう述べている。「過去に展示した《椅子の上の乾いた像》と同じ作品でも、配置や文脈によってまったく異なる緊張感や感覚が生まれることを感じていただけるでしょう。作品が持つ力強い魅力が、文脈によって異なる意味やストーリーを生み出す点が非常に魅力的です。今回の展示では、その点をぜひ感じ取っていただきたいと思います」。
東京都現代美術館の収蔵品を中心に、現代美術の多様性を表現する企画となる「MOTコレクション」。ぜひ今回の展覧会を通じ、光と闇、時間などをテーマにした様々な表現に向き合ってほしい。