「sakamotocommon GINZA」に見る、坂本龍一が遺したものの可能性【2/2ページ】

 3階では、坂本龍一が残した貴重な音源を聴くことができる。坂本は生前、つねマイクとレコーダーを持ち歩き、自分の気になった音はすべて収録していた。その音源は作品に使われたものもあるが、一般公開されていないものも多い。

 本展では、坂本が遺した7つのフィールドレコーディング素材(収録された年代と場所が異なる7つの音源)と、坂本自ら乃木坂ソニースタジオで360 Reality Audioミックスに立ち会った最後のオリジナルアルバム『12』の音源を、360ミックス。没入感のある立体的な音場を体感できる。ソニーの次世代エンジニアとともに最新技術で音響設計された音源は、坂本が残したデータの利活用の可能性を示している。

展示風景より

 また同じフロアでは、「Sakamoto Library Extension」として、「坂本図書」(*)の蔵書にあるものと同じタイトルの古書をラインナップ。坂本自身が関心を寄せた書籍の一部を、フィールドレコーディングの音源に包まれながら堪能したい。

展示風景より

 4階には「LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999」のためにデザインされた坂本所有の「Opera Piano」が佇む。

 「Opera Piano」は、ピアノの装飾性を排し、基盤を可視化することで、「楽器としての機能」をあらわにすることをイメージしてデザインされたもの。坂本の、「指揮者としてオーケストラを牽引しつつ、ピアノを演奏するスタイルを実現したい、そしてその舞台にふさわしいピアノをつくってほしい」という願いのもと、ヤマハデザイン研究所が製作した。

 会場では、このピアノがフロア中央に置かれ、『Aqua』『energy flow』『put your hands up』『鉄道員』『Merry Christmas Mr.Lawrence』などの名作を、坂本が遺した演奏を映像とともに聴くことができる。坂本の存在と不在をより強く感じさせる空間だ。

展示風景より、Opera Piano

 なお本展は、sakamotocommonのクラウドファンディング(3000円〜15000円)参加者のみが入場できる仕組みとなっている。

 また12月21日からは、東京都現代美術館で大規模個展「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」も開催。本展とあわせてチェックすることで、より坂本龍一への理解が深まるだろう。

*──坂本図書ら坂本が自身の本を多くの⼈と共有し、同時に「あるひとの心を動かした『本』」という⽂化資本を分かち合う事業であり、2017年に坂本自らが実現に向けて動き始め、23年9月に都内某所でスタートした坂本所蔵の本を読むことができる図書空間(完全予約制で場所は非公開)。

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