第5章「海の物語」では、龍子の《龍巻》(1933)と草間彌生《海底》(1983)、《自転車と三輪車》(1983)の並びが強い印象を残す。海洋生物が自然のエネルギーの塊である竜巻とともに描かれる龍子の海と、強烈な青を用いて絵と立体で表した草間の海、それぞれの海を堪能したい。
第6章「日々、物語はつづく 〜見慣れた光景、大切なもの」では、奈良美智の描く女の子や猫、あるいは名和晃平の気泡で包まれたようなトランペットやスニーカー、青山悟が刺繍で描いた都市など、日常のなかで身の回りに寄り添うようなものを表現した作品を見ることができる。
番外編としては、川端龍子がアトリエとして使っていた、記念館に隣接する邸宅で展示が行われている。とくに、加藤泉による布を使った大型作品《Untitled》(2020)が、室外の庭園の風景と呼応しながら存在感を放つさまは、本展ならではの景色といえるだろう。本邸宅は太平洋戦争中に爆弾が落ち、半壊したという歴史も持つ。龍子の代表作のひとつ《爆弾散華》(1945)はその経験をもとに描かれた作品であるが、こうした龍子の人生の厚みをじっと佇むように感じている加藤の作品は、見るものの様々な感情を呼び起こすはずだ。
川端龍子と現代美術家たちの、ここでしか見られないコラボレーション第2段。バリエーション豊かな作品が、龍子の作品、そして人となりまでを改めて再認知させてくれる展覧会となっている。