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時代を写すコレクションはいかにして生まれるのか。高橋龍太郎インタビュー

東京・天王洲のコレクターズミュージアム「WHAT」で開催中の「-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション」展(〜5月30日)で、精神科医・高橋龍太郎の70点にわたるコレクション作品が展示されている。名実ともに日本を代表する現代美術コレクターとして日本の美術界に多大な影響を与えてきた高橋に、展覧会で目指したものや、自身のコレクションの現在地について聞いた。

聞き手・構成=安原真広(ウェブ版「美術手帖」編集部)

「-Inside the Collector’s Vault,vol,1-解き放たれたコレクション」会場にて、高橋龍太郎。後ろはBIEN《Day For Night》(2019)

──「-Inside the Collector’s Vault,vol,1-解き放たれたコレクション」の展示を見て、高橋さんが本当に多くの若手作家の作品をコレクションしていることに驚きました。川内理香子、DIEGO、BIEN、梅沢和木、水戸部七絵をはじめ、80〜90年代生まれのアーティストの作品を展示していますが、こうした若手のアーティストはどのように見つけてコレクションしているのでしょうか?

 ギャラリストから情報をもらったり、インターネットで作品を見たりして出会っています。私が特別なルートを持っているわけではなく、ギャラリストたちに若い世代が増えて自分のネットワークを広げてくれた結果、私もこうした作家と出会うことができているんだと思います。『美術手帖』も貴重な情報源です。水戸部さんとはニューカマー特集を通じて出会いました。

「-Inside the Collector’s Vault,vol,1-解き放たれたコレクション」展示風景より、左から梅沢和木《ジェノサイドの筆跡》(2009)、DIEGO《Ladder Boys》(2019)

──高橋さんはこれまでに多くのコレクション展を企画開催されてきました。幼形成熟した日本のオタク文化とアートとの関係性を示唆した「ネオテニー・ジャパン ― 高橋コレクション」(上野の森美術館、2009)や、東日本震災後の時代の癒やしを模索した「高橋コレクション展 マインドフルネス!」(霧島アートの森、2013)、もの派を始めとする日本の現代美術の文脈をあらためて振り返った「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」(東京オペラシティ アートギャラリー、2015)など、時代性に呼応してコレクションの展示を行っています。今回の展示は、現代と作品をどのように照らし合わせてキュレーションされたのでしょうか?

 この10年間で東日本大震災や新型コロナウイルスのパンデミックといった、歴史を変えるような大きな出来事を社会は経験したわけです。そうしたなかで、ネオテニー的な若い世代(村上隆、奈良美智、会田誠など)に日本の伝統的な文化が継承されているという、ある種の楽観主義に対して少し懐疑的になりました。

 そこで、本当に若い世代がゼロから出発してつくりあげた、新たな作品をまとめて見てみたいと思ったのが今回の展示の原点ですね。今回の展覧会テキストのタイトルを「描き初め(かきぞめ)」としたのも、そういった流れのなかで若い世代の強度のある作品を意図的に展示したいという思いを込めたからです。今回の作品群のキーワードをあげるとすると、ストリートから何かを見出している、ネットから生み出しているということになるのではないでしょうか? 以前のように細密、具象という方向ではなく、解体的、抽象的な世界に向かっているというのが僕のなかにある柱になっています。

 それと、若い世代にとって展示している作品が高踏的なものではなく、身近なものとして伝わるような展示空間にうまくなればよいと思っています。若い世代がストリートやネットといったフラットなところから作品を生み出しているので、そのフラット性を訪れた人たちが共有してくれるといいですね。会場の道路を挟んだ向かいにはDIEGOのグラフィティもあります。展示を見た帰りにグラフィティを見て、ストリートにDIEGOがいることを感じてくれれば、もっと展示の味わいが深まるんじゃないでしょうか。

東京・天王洲のWHAT近辺にあるDIEGOの作品 (c) Tennoz Art Festival 2019

──例えば、鈴木ヒラク、川内理香子、BIENといった作家の作品が具体的にわかりやすいかもしれませんが、今回展示したアーティストは​​、ドローイングや、その行為にともなう精神性を制作において重要視している方が多いように感じました。高橋さんはドローイングという行為をどのようにとらえていますか?

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