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「川端龍子+高橋龍太郎コレクション ファンタジーの力」(大田区立龍子記念館)開幕レポート。現代美術の多彩な目で見る川端龍子の「ファンタジー」【2/3ページ】

 第1章「旅立ち」で、まず目を引くのは会場入口の横幅が7メートルを超える巨大な龍子の作品《花摘雲》(1940)だ。本作は、龍子が太平洋戦争開戦の直前に満州を旅したときの雄大な草原に着想したものであり、龍子が旅を通じて自身の「ファンタジー」を拡げていたことを物語る。

展示風景より、川端龍子《花摘雲》(1940)

 本章では旅行時に龍子が使っていたトランクとともに、宮永愛子によるカバンや鍵を樹脂のなかに閉じ込めたインスタレーション《letter》(2013)も展開されている。龍子が旅した記憶が作品にも持ち物にも染みついていることが、宮永の作品と呼応することで強調された。

展示風景より、宮永愛子《letter》(2013)と川端龍子のトランク

 第2章「そこにいるのは誰?」では、アートチーム・目[mé]の、雲を立体的に切り取ったような作品《アクリルガス T-1919》(2019)や、下半分が鏡のように反転している丸山直文の風景画《Island of Mirror》(2003)など、存在と不在の境界が曖昧になるような作品を展示。

展示風景より、左が目[mé]《アクリルガス T-1919》(2019)
展示風景より、左が丸山直文《Island of Mirror》(2003)

 第3章「土と光、風の物語」では、龍子の《土》(1919)や《日々日蝕》(1958)といった、土や光を感じさせる作品とともに、李禹煥(リ・ウファン)や伊勢周平の絵画、さらに周囲の風景を反射するアクリルミラーを使用した玉山拓郎の作品が並ぶ。いずれも見る人それぞれにとって異なる風景をみせてくれる作品だ。

展示風景より、中央が川端龍子《日々日蝕》(1958)
展示風景より、左が玉山拓郎《5 Shapes(Sally Green)》(2020)

 第4章「夢の領域」で中心となるのは、龍子が岩手・平泉の中尊寺金色堂の奥州藤原氏のミイラから着想を得た作品《夢》(1951)で、棺桶に入ったミイラとともに様々な種類の蛾が描かれている。死者の夢を想起させる本作は、安藤正子の実在感の薄い不思議な雰囲気を漂わせる女性や、池田学の緻密な風景画、大野智史の抽象画とともに、非現実の世界へと見る者をいざなう。

展示風景より、右が川端龍子《夢》(1951)

編集部

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