水戸芸術館の現代美術ギャラリーは展示室をめぐったあとに、細長い廊下状の展示空間を通って入口方向に戻る構造になっている。田村はここにまるで倉庫のようなキャビネットを配置し、これまで制作した作品の断片や制作の道具、展示で使用した素材などを収納した。
この試みを田村は「展示室にある作品はすべて入れ替えることが可能であるという、代替可能性を感じさせたかった」と語る。たしかに、この大量の文物がバックヤードのように展示室の裏に存在することは、観賞者に展示がいつまでも完成していないような印象を与え、「展覧会における完成とはなにか」という問いを無限に生み続ける。
なお、このバックヤードのような空間に無作為に置かれている作品を含めた品々も、じつは展示室と同様に何かしらのアルファベットにもとづいた文脈によって整理されている。展示室よりもさらに混迷を深めるそれぞれの文物をつなぐ文脈を、絡まった糸を解きほぐすように探ってみてはいかがだろうか。