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丸の内を散歩しながら彫刻作品を楽しむ。50周年を迎えた「丸の内ストリートギャラリー」が開幕

東京・丸の内仲通りで美術作品を展示するプロジェクト「丸の内ストリートギャラリー」。開催50周年をむかえる本イベントは、今月より4年ぶりとなる新作の設置や一部作品入れ替えを実施するなどの試みを実施している。その様子をハイライトでお伝えする。

展示風景より、舟越桂《私は街を飛ぶ》(2022)

 東京・丸の内仲通りをメインに、近代彫刻の巨匠や現代美術家の作品を展示するプロジェクト「丸の内ストリートギャラリー」。三菱地所と彫刻の森芸術文化財団によって1972年に始まった本プロジェクト。今回は開催50周年を記念し、4年ぶりとなる新作の設置や、一部作品入れ替えを実施するなどの試みが行われている。

展示風景より、

 第43回となる今回展示されているのは、現代美術作家による新作5点、継続作品2点、入れ替え作品12点の計19点。新作を制作した作家としては、舟越桂、名和晃平、H&P.シャギャーン、中谷ミチコ、松尾高弘が名を連ねる。丸の内を散策しながらアートを楽しめる本イベントを、新作を中心にレポートしたい。

展示風景より、キム・ハムスキー《ルネッサンス》(1985)

 丸の内仲通りビル付近にある舟越桂の《私は街を飛ぶ》(2022)は、舟越のこれまでの作品に共通する顔立ちの彫刻となっている。今回舟越は、木彫ではなく屋外に設置することを考慮してブロンズによって作品を制作。頭部に教会や本、並木道が配された本像は鮮やかに着色されたうえで陰影も描きこまれており、時間や季節の移り変わりによって様々な表情を見せるという。

展示風景より、舟越桂と《私は街を飛ぶ》(2022)

 馬場先通りとの交差点付近にある中谷ミチコの《小さな魚を大事そうに運ぶ女の子と金ピカの空を飛ぶ青い鳥》(2022)は、魚の泳ぐ水をスカートに入れて大事そうに運ぶ少女をレリーフで表した彫刻作品。妊婦をモチーフに制作されたこの少女は、一般的なレリーフとは異なり凹凸を反転させることで像を結んでいる。凹凸によって「不在」を表現してきた中谷が、誰もがそうであった胎児という「実在」を街中に現出させた。

展示風景より、中谷ミチコ《小さな魚を大事そうに運ぶ女の子と金ピカの空を飛ぶ青い鳥》(2022)

 アンリ・シャギャーンとピエール・シャギャーンが04年にウィーンで制作した2枚の絵をもとにつくられたH&P.シャギャーン《Matching Thoughts》(2022)は、丸の内仲通りビルの向かい側に設置されている。近代彫刻への敬意が込められた本作は、あえて先鋭を目指さなかったその造形に、様々な問いが込められた。

展示風景より、H&P.シャギャーン《Matching Thoughts》(2022)

 名和晃平《Trans-Double Yana(Mirror)》は2012年に制作した作品を、今回のストリートギャラリーのために台座を新たにし、新作として丸ビルの裏手に設置したものだ。3Dスキャンしたポリゴンの表面にエフェクトをかけ、そのデータを再び実体化させることでつくられた本作。情報データの表皮によってそのディティールはかたちづくられており、現代における実存を問いかける。

名和晃平 Trans-Double Yana(Mirror) 2012 提供=丸の内ストリートギャラリー

 松尾高弘は大手町ビルのエントランス2ヶ所に光のインスタレーション《Prism"Dahlia + Peony"》を設置。花の結晶をモチーフにつくられた本作は、昼は太陽光を取り込みながら輝き、風景と交錯することが目指されている。

展示風景より、松尾高弘《Prism"Dahlia + Peony"》(2022)
展示風景より、松尾高弘《Prism"Dahlia + Peony"》(2022)

 継続展示の作品も見逃せない。二重橋スクエア付近の草間彌生《われは南瓜》(2013)は、草間にとって初の石彫作品として2013年につくられた。草間がモチーフとして使い続けてきたカボチャだが、本作は半永久的に残る御影石という素材に、草間自身の作家としての姿勢を込めているという。

展示風景より、草間彌生《われは南瓜》(2013)

 また、東京スカイツリーのデザイン監修でも知られ、「そりのあるかたち」を追求してきた彫刻家・澄川喜一の作品は、馬場先通りとの交差点付近で見ることができる。《白のマスク》(1969)は「MASK」シリーズのひとつで、有機的なかたちとシャープなフォルムが組み合わされ、構造を強く感じさせる彫刻となっている。

展示風景より、澄川喜一《白のマスク》(1969)

 そのほかの展示作家は以下のとおり。アギュスタン・カルデナス、イゴール・ミトライ、キム・ハムスキー、ジム・ダイン、ジュゼッペ・スパニューロ、ティモ・ソリン、パヴェル・クルバレク、バーナード・メドウズ、ヘンリー・ムーア、松尾高弘、三沢厚彦、ルイジ・マイノルフィ、レナーテ・ホフライト。

展示風景より、ヘンリー・ムーア《羊の形(原型)》(1971)

 警備や定期的な清掃も実施されており、屋外展示ながらもつねに良好な状態で作品を鑑賞できる本イベント。夜間はライトアップもされるので、丸の内に立ち寄った際は気に入った作品を探してみてはいかがだろうか。

展示風景より、レナーテ・ホフライト《凹凸のブロンズ》(1989)

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