KAAT神奈川芸術劇場(以下KAAT)が2016年から毎年開催している、劇場空間と現代美術の融合による新しい表現を生み出す企画シリーズ「KAAT EXHIBITION」。その7回目となる展示、「Lines 鬼頭健吾展」が開幕した。会期は6月5日まで。
鬼頭は1977年愛知県生まれ。2003年に京都市立芸術大学大学院美術研究科油画専攻を修了し、2008年には五島記念文化賞を受賞してニューヨークに滞在。2010年には文化庁新進芸術家海外研修員としてベルリンに赴いた。現在は群馬県を中心に活動をしており、フラフープやスカーフ、蛍光灯などの既製品や混色をしていない絵具を使い、日常にあるものを使って色彩的な感度を拡張する作品を発表している。
今回の展覧会ではアトリウム天井からカラフルな縦のラインを創造し、色彩のリズムとコントラストが響き合うインスタレーションを計画。「街にひらかれた劇場」をテーマに、初めてKAATのアトリウムが会場として使用された。
KAATでは過去最大スケールのインスタレーションとなる本展では、オレンジ、イエロー、ピンク、ブルー、イエローなど鮮やかな長さ4メートル、4センチ角の棒(ライン)が200本、螺旋状に天井から吊るされ、吹き抜けを埋め尽くしている。棒を吊るすためのロープは総延長1万メートルにおよぶという。
1階エントランスから見るだけでは全貌を把握しきれないほどの巨大なインスタレーション。鑑賞者はKAATの螺旋状エスカレーターを上がることで、様々な角度からその作品をとらえていくことになる。
本展に際し、KAAT芸術監督の長塚圭史は「期待以上の作品」だと評価。「鬼頭作品の面白さは視覚的な発想を超えてくるところ。下からだけでなく上からも眺めてほしい」と語っている。
また鬼頭はこの挑戦について、「完成して感無量だ。最初は無茶な話だと思ったが、結果的に自分ではやったことがない規模になり、新しいことができた」と振り返る。
なお、本展関連企画として山本卓卓が作・演出を手がける『オブジェクト・ストーリー』がKAAT館内および外部で開催。随所に散りばめられたストーリーの欠片を見つけて楽しんでほしい。