世界初公開の作品も。WHAT MUSEUMで桶田コレクションの出発点から現在までを総覧

20年以上にわたりアートを収集してきたコレクターの桶田俊二・聖子夫妻。そのコレクションの入り口である骨董から、現代アーティストにコミッションした最新作までを紹介する展覧会OKETA COLLECTION「Mariage −骨董から現代アート−」展が、東京・天王洲にあるWHAT MUSEUMで始まった。

展示風景より、左からラシード・ジョンソン《I've Known Rivers》、アダム・ペンドルトン《Independance(Protest II)》、李朝白磁壺、ヴァージル・アブロー《advertise here》

 約20年の年月をかけて骨董や現代アートを収集してきたコレクターの桶田俊二・聖子夫妻。そのコレクション「OKETA COLLECTION」を2期に分けて紹介する展覧会の前期となる「Mariage −骨董から現代アート−」展が、東京・天王洲にあるWHAT MUSEUMでスタートした。

 「Mariage(マリアージュ)」とは、フランス語で「結婚」や「婚姻」を意味する言葉。別々の存在が、互いに高め合い引き立て合い調和した状態も指す。本展は、桶田夫妻のアート収集の入り口である骨董から、2010年頃より精力的に収集している現代アートまで、国や年代、素材も異なる多種多様な作品をひとつの空間で「マリアージュ」することで、そのコレクションを多面的に紹介するものだ。

 展覧会は、「身体」「モノクロ」「カラフル」といった3テーマのもと、4エリアに分けて構成。それぞれのエリアでは、本展で初出展となる作品や作家の新作を含む現代アートの作品が、李朝の陶磁器や、北大路魯山人、河井寛次郎、岡部嶺男など日本を代表する陶芸家の逸品とともに紹介されている。

 会場中央にあるホールエリアでは、「身体」のテーマをもとに立体作品を中心に展示。建築設計事務所「MMA Inc.」が展示構成を手がけたこのエリアでは、それぞれの作品は高さの異なる展示台に置かれており、個性豊かな作家の作品を異なる視点で鑑賞することが意識されているという。

展示風景より、手前はVERDY《VICK》

 例えば、同エリアの中央にはグラフィックアーティスト・VERDYによる初の大型立体作品《VICK》が出現。同作の真正面にはマンゴ・トムソンの鏡面作品《November 14, 2016(The End is Near)》が展示されており、鑑賞者が鏡に映り込むことで作品が完成するというものだ。そのほか、桶田夫妻が直接アーティストにコミッションしたMr.の《かりん ― 甘酸っぱい思い出》や、上海のアートフェアで購入したアフリカ系アメリカ人アーティスト、チャバララ・セルフのネオン作品《Wash N' Set 2》なども、同エリアの注目作品だ。

展示風景より、中央はマンゴ・トムソン《November 14, 2016(The End is Near)》
展示風景より、右はMr.《かりん ― 甘酸っぱい思い出》。壁面のネオン作品はチャバララ・セルフ《Wash N' Set 2》

 隣のSPACE 3には「カラフル」な作品が集結。展示室の中央には桶谷寧《曜変天目茶碗》や北大路魯山人《椿鉢》などの陶芸作品が展示されており、壁面にはジャン・ジュリアンやハビア・カジェハ、上條晋、メル・ボックナーなどの作品が飾られている。

展示風景より
展示風景より

 特筆すべきは、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト、クレイグ・クチアの絵画《a window as a painting as a painting is a window》。桶田夫妻がアーティストに委託し制作された同作は、本展の開幕前にロサンゼルスからWHAT MUSEUMに直接届けられ、本展で世界初公開されたという。コロナ禍で密閉された空間のなかで窓を引き立てたこの作品は、鑑賞者の想像力を掻き立てる。

展示風景より、クレイグ・クチア《a window as a painting as a painting is a window》 Courtesy of the Artist and MAKI Gallery

 反対側のSPACE 4では、展示作品の雰囲気が一変。「モノクロ」の作品のみが出品されているのだ。

 李朝の白磁壺とともに、桶田夫妻と親交があり、昨年11月に死去したヴァージル・アブローの絵画や、アートとファッションの領域を横断しながら活動するラシード・ジョンソンやアダム・ペンドルトンの作品が出現。長年ファッションビジネスに携わっている桶田夫妻コレクションの特徴をもっとも象徴する展示とも言える。

展示風景より、左からヴァージル・アブロー《advertise here》、TIDE《COMPO:L》、李朝白磁壺
展示風景より、左からラシード・ジョンソン《I've Known Rivers》、アダム・ペンドルトン《Independance(Protest II)》

 SPACE 5では、マシュー・デイ・ジャクソン、ネイト・ロウマン、名和晃平の作品3点が展示。名和晃平が率いる「SANDWICH」の協力を得てデザインされた奥の展示室では、名和の代表作《PixCell-Deer#48》が薄暗い空間のなかで明るい輝きを放つ。鹿の剥製の表面を透明の球体(セル)で覆った彫刻作品では、セルのレンズの効果によって物体の表面が歪曲され、見る者の視点によってその景色も大きく変化する。

展示風景より、左からマシュー・デイ・ジャクソン《Flowers in a Wooden Tub(Paris)》、ネイト・ロウマン《Hyacinth》
展示風景より、名和晃平《PixCell-Deer#48》 © Kohei Nawa | Sandwich

 一目惚れのように強く刺激を受けた作品を収集し、ユニークなコレクションを形成してきた桶田夫妻。骨董と現代アートを融合させた本展を通し、そのアートに対する審美眼を堪能してみてはいかがだろうか。

桶田俊二・聖子

編集部

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