2021.11.27

モノクロで表現されるノスタルジックな心象風景。TIDEの最新アプローチをThe Massでチェック

ネコをメインモチーフにしたモノクロームの絵画シリーズ「CAT」で知られるアーティスト、TIDE。その新作個展「BLOOM」が東京・神宮前のギャラリー・The Massで開幕した。「CAT」シリーズをはじめ、新作シリーズ「Life is Flat」や立体的なインスタレーションが展示されている。

展示風景より、「CAT」シリーズの新作群
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 独学で絵を描き、ネコをメインモチーフにしたモノクロームの絵画シリーズ「CAT」で高い人気を博すアーティスト・TIDE。昨年名義を変更してGALLERY COMMONで開催した「DEBUT」展に続き、その2回目の個展「BLOOM」が東京・神宮前のギャラリー・The Massで開幕した。

 TIDEは1984年静岡県生まれ。オーストラリア滞在時に出会った水木しげるの漫画から着想を得て制作活動を開始し、その後、東京を拠点に2009年からペインターとしてのキャリアをスタートさせた。当初は点描画をはじめとした鉛筆画を中心に制作していたが、表現力の高い絵画的アプローチに目覚め、キャンバス上での実験を続けながら新しい技法を模索し、現在のスタイルに至っている。

展示風景より、「CAT」シリーズの新作群

 その作品は1930年代から50年代の古いハリウッド映画やアニメーションに多大な影響を受けており、子供時代の原風景やノスタルジアといった普遍的なテーマを混在させることで、独自の絵画世界を確立している。

 本展のタイトル「BLOOM」は、TIDEの作品にしばしば登場する花のイメージを意味すると同時に、アーティストとしてのアイデンティティを表すメタファーでもある。また、スタイルの進化や絵画技術の躍進など、さらなる芸術的挑戦のために成長していくことも意味している。

展示風景より、「CAT」シリーズの新作群

 展覧会では、TIDEが2019年より制作を続ける「CAT」シリーズをはじめ、「Life is Flat」と題された新しい絵画シリーズを含む最新作19点と、その芸術活動の新たな始まりを示す立体的なインスタレーションが展示されている。

 「CAT」シリーズでは、幼少期の記憶から立ち現れた寝室の光景や夜の景色のなかにいるネコのキャラクターが描かれている。広がるカーテンや柔らかな家具、内的世界と外的世界をつなぐ役割を持つ窓は、作家自身の心象風景を表す。また、キャラクターをフラットに、室内の光景や背景を立体的に描くことで、生物と無生物、現実と空想、二次元と三次元の境界をいっそう強化する。

展示風景より、「CAT」シリーズの新作群

 新作シリーズ「Life is Flat」は、「CAT」シリーズと同じようなモノクロームのスタイルやテクニックを継承したもの。静物画の様式を再解釈したこれらの作品では器や花瓶に入る様々な花束が描かれており、生き物である花は二次元で、生き物ではない花瓶は三次元で表現されている。ハルクやE.T.など有名な映画キャラクターをかたどった花瓶に花が活けており、繊細な花のイメージと怪獣やエイリアンのモチーフが並置されている。

展示風景より、新作シリーズ「Life is Flat」の作品群