戦後美術を中心に、近代から現代まで約5500点の作品を収蔵する東京都現代美術館。そのコレクションはこれまで「MOTコレクション」展として様々なかたちで紹介されてきた。
11月13日にスタートした「Journals 日々、記す vol.2」は、コロナ禍やオリンピック、あるいは私たちの日常を背景に制作された作品を、アンソロジー形式で紹介するものだ。
展示の冒頭を飾るのは、Chim↑Pomによる巨大作品《May, 2020, Tokyo(大久保駅前)──青写真を描く》(2020)だ。第1回目の緊急事態宣言によって人々の活動が止まっていた昨年5月、Chim↑Pomは感光液を塗ったキャンバスをビルボードに設置。宣言期間中、日光に晒すことで当時の光と空気を焼き付けた。当時の東京を記憶した重要な作品のひとつと言えるだろう(本作展示は22年1月末まで)。
Chim↑Pomに続く大岩オスカールの作品群も見逃せない。3つのパートから構成された6メートルを超える巨大なドローイング作品《ゼウス:オリンピアの神(リオ、東京、パリ)》(2019)は、オリンピックに関わる3つの都市をテーマに描かれたもの。大岩が3都市に抱く記憶と象徴的なシンボルが組み合わさり、ひとつの絵巻のようにつながる。
その対面には大岩がコロナ禍のニューヨークで隔離生活を続けるなか、描き続けた「隔離生活ドローイングシリーズ」も一堂に展示。人々が消えた街の様子が記録されている。
会場では、今年7月に急逝したクリスチャン・ボルタンスキーの所蔵作品も追悼展示。2019年から20年にかけて国内を巡回した大規模個展にも出品されたボルタンスキーの代表作、《死んだスイス人の資料》(1990)と《D家のアルバム、1939年から1964年まで》(1971)を広い空間で見ることができる。
加えて本展では、2020年にこの世を去った康夏奈(吉田夏奈)の特集展示も重要なパートをなす。自然のなかに自身の身を置き、それを制作プロセスに取り入ることで様々な作品を生み出してきた康。会場は康が2011年から6年にわたり暮らした小豆島で制作された巨大なインスタレーション《花寿波島の秘密》(2013)を中心に展示が構成されている。作家が自然と対峙することで得た感覚が表象された作品群とじっくり向き合いたい。
本展ではこのほか、同館で開催中の「久保田成子展」とも関連するフルクサスや、森美術館「アナザーエナジー展」で注目を集める三島喜美代など多彩な作家がラインナップされている。企画展を見た後には忘れずにチェックしてほしい。