1927年に内藤多仲、木子七郎、今井兼次の手によって竣工した登録有形文化財「旧山口萬吉邸」。現在は会員制のビジネスイノベーション拠点「kudan house」として活用されているこの場所で、「時/とき」をテーマにした展覧会「The Still Point – まわる世界の静止点」が始まった。9月5日まで。
本展は、GINZA SIX6階にある銀座 蔦屋書店アートギャラリー「THE CLUB」でマネージングディレクターを務める山下有佳子がキュレーションするもの。イギリスの詩人、T.S.エリオットが『バーント・ノートン』のなかで探求した、現実の時間と永遠が交差する地点「“The still point”-静止点」を起点とし、国内外19組によるアーティストの作品が3フロアの各所で展示されている。
山下は本展に際し、「コロナを経て、いちど停止したかのような時間。それがまたものすごい速さで動き始めたいま。多くの人が改めて『時間』について考えているのではないでしょうか」としつつ、以下のように本展の狙いを語っている。
「それは多くのアーティストたちを惹きつけてきたテーマでもあります。アートは、その一方通行にも見える時間というものの多面性を、私たち鑑賞者に再認識させてくれます。過去を愛しみ、未来に思いを馳せ、または不変というものに想いを巡らせる。会場を後にし、また日常へと戻るとき、時間に消費されるのではなく、私たち自らの感性と感覚で“とき”をとらられるよう願っています」。
館内にはダニエル・ビュレン、ルチオ・フォンタナ、サム・フランシス、杉本博司、河原温、宮島達男、黒田辰秋、李禹煥、菅木志雄、名和晃平といったすでに高い評価を得ている作家から、小瀬真由子、猪瀬直哉、オリバー・ビアなどの若手も参加。一部を除き、ほとんどの作品は購入可能であることも注目だ。
なお、kudan houseでは「パビリオン・トウキョウ2021」の展覧会も同時開催中。建築家・石上純也による巨大なインスタレーション《木陰雲》も体験できる。