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2020.11.6

都市空間の隙間にアーティストの制作が入り込む。藤元明による「ソノ アイダ#有楽町」が目指すものとは

アーティスト・藤元明のディレクションのもと、空き物件をはじめとする空間をメディアとして活用するアートプロジェクト「ソノ アイダ」。現在、東京・千代田区の丸の内にある「国際ビルヂング」内で「ソノ アイダ#有楽町」が開催されており、3人のアーティストが「ソノ アイダ#有楽町」に滞在しながら作品制作と展示、販売を行なうプロジェクト「ARTIST STUDIO ACTIVITIES」が11月29日まで開催中だ。

「ソノアイダ#有楽町」アーティスト・トークより、左から相澤安嗣志、名和晃平、藤元明、藤崎了一
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 アーティスト・藤元明のディレクションのもと、借し物件や空き物件、占有権のない空間をメディアとして活用するアートプロジェクト「ソノ アイダ」。これまでに世田谷区・池尻、大田区・西蒲田、目黒区・自由が丘、大田区・京浜島などで実施されてきたこのプロジェクトが、千代田区・丸の内のビル内で11月29日まで開催されている。

 プロジェクトの会場となっているのは、丸の内の仲通りに面する「国際ビルヂング」の1階の空き店舗。同ビルを管理する三菱地所の協力のもと、「ソノ アイダ#有楽町」と名付けられ、すでに藤元のアートプロジェクト「2021」とファッションブランド「ANREALAGE」とのコラボレーション展示や、アートの廃材を回収・販売するアートプロジェクト「副産物産店」などが展開されてきた。

ソノ アイダ#有楽町

 この「ソノ アイダ#有楽町」で、現在開催されているプロジェクトが「ARTIST STUDIO ACTIVITIES」。藤元、藤崎了一、相澤安嗣志の3人のアーティストが「ソノ アイダ#有楽町」に制作環境を移設し、滞在しながら作品制作と展示、販売を11月29日まで行なうプロジェクトだ。

 「ソノ アイダ#有楽町」は、国際ビルヂング1階のエントランス付近にある、ガラス張りの空き店舗空間で実施されている。ここで、藤元、藤崎、相澤それぞれが作品制作を実施。出来上がった作品は壁に展示され、訪れた人が購入することも可能。作家のアトリエを訪れて作品を購入するという体験を、オフィス街の中心で味わうことが可能だ。

ソノ アイダ#有楽町

 このプロジェクトで活用されているのは、この1階の店舗スペースだけではない。ビルの地下6階にある、倉庫などで使用されていたスペースには照明が持ち込まれ、できあがった作品を保管するとともに、希望する人はビューイングも可能。使用されていなかった施設に、新たな役割を与えている。

地下6階の倉庫兼ビューイングルーム

 藤元は「ARTIST STUDIO ACTIVITIES」のコンセプトについて次のように語っている。「アートは現場がいちばんおもしろいというコンセプトのもと、アーティストが生活する空間を丸の内というオフィス街に持ち込んでみた。ビジネスマンが行き交うオフィス街のビルで『つくる』という現場を見せることができるし、有楽町生まれの作品を地産地消させることができる」。

 また、3人のアーティストが同じ場所で一定期間、制作を行なうことについては、次のように話した。「一緒に過ごす時間が長いので、これまでも現場を共有することも多く、勝手も気心も知れている3人を集めた。アトリエで制作をするよりも、他者の意見を聞けるし、考え続けることができるという意味で刺激的だ」。

 10月30日には「ARTIST STUDIO ACTIVITIES」に参加する3人に、名和晃平を加えた4人によるアーティスト・トーク 「作品のつくりかた」も開催。このトークショーでは、藤元、藤崎と旧知の仲である名和が、今回のプロジェクトについてコメント。アクティビティを見せるというシステムを藤元がつくり出しているとしたうえで、「お互いがうまく刺激し合う状況そのものをデザインしている」と評した。

「ソノ アイダ#有楽町」アーティスト・トークより、左から名和晃平、藤元明、藤崎了一

 さらに名和は「美大で制作しているときの、制約のない状態をつくりだせている」と、羨ましさをにじませ、最後に次のように提案をした。「テナントがひしめき合い、ビジネスのルールで決められてつくられた丸の内という土地に、カテゴライズができない場所が出現することはとてもおもしろい。ビジネスマンが毎朝通り過ぎるようなこの場所で、例えば『何もしない』『つくらない』といった、作品制作ではないパフォーマティブな作家を入れてみるのもおもしろいのでは」。

ソノ アイダ#有楽町

 名和の指摘どおり「ARTIST STUDIO ACTIVITIES」を自身のアクションと位置づけているという藤元は、本プロジェクトを次のように総括する。

 「このプロジェクトはアーティストがサバイブする手段としてのひとつの試みであり、永続的に残るものではなく、その場でのアクティビティを重視している。いまは、作家自身がSNSなどで情報を発信できる時代。制作の過程やアーティスト本人に顧客がアクセスできる状態をつくり、ギャラリーで成果物を見るだけではない価値を可視化しようとしてみた」。