今年4月、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、世界にメッセージを発信した草間彌生。その最新個展が、草間彌生美術館で始まった。会期は7月30日〜2021年3月29日。
本展タイトルは「我々の見たこともない幻想の幻とはこの素晴らしさである」。22点の出品作品は、すべて過去10年間に制作されたもので、いずれも日本初公開または世界初公開となる。
1階エントランスでは、連続する女性の横顔をアルミニウム鋳造でかたちづくった、本展のための新作《永遠に続く女の魂》(2019 / 2020)を展示。空中を漂うかのような軽やかさと、それとは対象的な強烈な色彩が印象的だ。
2階では、草間自身が出演する映像インスタレーションに注目だ。《マンハッタン自殺未遂常習者の歌》(2010)は、草間自ら作詞作曲した曲を歌う様子が、様々なサイケデリックな背景とともに映し出される。スクリーンは合わせ鏡となっており、歌唱の様子が無限に反射される。
3階は、草間が2009年から取り組んでいる大型の絵画シリーズ「わが永遠の魂」から、2018年以降手がけた最新の作品を展示。これまでの同シリーズより小型のサイズとなっており、《数ある希望を撒き散らしてきた宇宙への憧れ》(2019)や《名の知れない黒い影が宇宙を飛び歩いているのをあなたは見たことがあるのか》(2019)など、作品タイトルから草間の宇宙への関心が見て取れる。
また同じフロアには、本展のために制作された世界初公開のミラールーム《無限の鏡の間─宇宙の彼方から呼びかけてくる人類への幸福への願い》(2020)も設置。4色のLEDライトが鏡張りの空間で明滅し無限に反射する、没入型のインスタレーションだ。
4階では、日本初公開となる参加型作品《フラワー・オブセッション》(2017 / 2020)を体験してほしい。本作は、草間がかつて自伝のなかで語った、テーブル・クロスの花模様が部屋中に増殖する幻覚のヴィジョンを作品化したもの。鑑賞者は、花のステッカーか造花を部屋に持ち込み、好きな場所に貼り付けることができる。時間が経過するにつれ花は増加し、草間のヴィジョンへと近づいていく。
屋上の立体作品も、本展のために制作された世界初公開のものだ。《天空にささげたわたしの心のすべてをかたる花たち》(2018)は、ブロンズ鋳造の作品。草間は近年、アルミニウムやブロンズなどの金属素材を好んで使っているが、そこには作品を永遠に残したいという草間の願いがあるという。
本展で展示される新作の数々を通し、草間彌生が見る多様なヴィジョンを追体験してほしい。