「対」で成り立っている、日本や中国の絵画に焦点を当てた展覧会「〈対〉で見る絵画」が、1月9日より根津美術館にて開催される。
「対」の絵画のうち、もっともポピュラーとされているのが二幅でひと組みとなる、二幅対の絵画だ。各幅に描かれたモチーフや構図が対立、あるいはつながるように構成されることが多い。
狩野山雪《梟鶏図》(17世紀)は、湾曲した松の枝にとまるフクロウと、屋根の上で鳴くニワトリが対となった墨画。狂言の『梟山伏』や『鶏聟』を意識して描かれたとも考えられており、夜行性のフクロウと、朝を告げるニワトリが対となっている。
いっぽうの谷文晁《離合山水図》(1818)は、並べると絵がつながる二幅対だ。離合形式と呼ばれるもので、山水の山並みや雲海が2枚にまたがり連なるように見える。
一双が対になった迫力ある屏風も展示される。作者不詳の《吉野龍田図屏風》(17世紀)は、右は吉野の桜、左は龍田川のもみじと、古来より歌に読まれてきた春と秋の象徴的な風景を描き、華やかな対比が鮮やかに表現されている。
雪村周継《竜虎図屏風》(16世紀)は、古くから実力が拮抗するライバルとされてきた竜と虎を屏風に描いたもの。これは、戦国武将や禅僧の間で好まれたモチーフだ。
工芸では、機知に富んだ龍と虎の対の表現も見られる。船田一琴《龍虎図縁頭》(19世紀)は、刀の柄の頭の部分につける金具・柄頭だが、漢字表記が「龍胆」であるリンドウと、「虎耳草」のユキノシタという植物の図案を組み合わせて龍虎を表している。
3幅で一組となる「三幅対」の絵画は、仏や仙人といった伝説上の人物を中心とし、左右に花鳥や山水を配したもの。これは日本独特の形式であり、室町時代以降に流行したものだ。三副対においては、中央に描かれるものが重要な存在とされる。
室町後期の画僧・楊月の描いた《太公望・花鳥図》(15世紀)は、左右には花鳥、中央には古代中国・周の軍師である太公望が配置され、その賢人ぶりが表現される。
春木南冥《三夕図》(18〜19世紀)は、『新古今和歌集』から「秋の夕暮」と結ぶ、3首の和歌を読んだ歌人、寂蓮、西行、藤原定家を描いたもの。中央に配置されるのは藤原定家であり、和歌における定家の尊重をうかがわせる。
また、珍しいとされる「五幅対」の作品、谷文晁《寿老・四季山水図》(1761)は、春夏秋冬の4服と中央の寿老により構成。飾る場所の大きさや、季節によって様々に組み合わせることができるようになっている。
今回展示された対の作品のなかには、本来は異なる美術館に別れて収蔵されているものも少なくない。この機会に、元来意図されていた「対」で作品を楽しむことで、その新たな魅力を発見してみてはいかがだろうか。