NEWS / REPORT - 2019.11.16

なぜ人はつくるのか。MOTアニュアル「2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影」が開幕

日本の若手アーティストを中心に紹介する展覧会、MOTアニュアル。その15回目となる「Echo after Echo:仮の声」が開幕した。THE COPY TRAVELERS、PUGMENT、三宅砂織、吉増剛造プロジェクト|KOMAKUS+鈴木余位、鈴木ヒラクが、作品を通じて「なぜ人はつくるのか」という根源的な問いに向き合う。

 

THE COPY TRAVELERS《THE COPY TRAVELERSの机上の空間》の展示風景
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 日本の若手アーティストを中心に紹介する東京都現代美術館のグループ展「MOTアニュアル」の第15回となる展覧会「Echo after Echo:仮の声、新しい影」が開幕した。参加アーティストは、THE COPY TRAVELERS、PUGMENT、三宅砂織、吉増剛造プロジェクト|KOMAKUS+鈴木余位、鈴木ヒラク。

 キュレーションを手がけた藪前知子は本展についてこう語る。「集まったのは、主体が透明で、文化や歴史に割り込んでそれを活性化させる、媒体のような役割を担うアーティストたち。『人はなぜつくるのか』という大きな問いを掲げたが、つくるためにアーティストたちが動かす手から、『いま』という瞬間が浮かび上がるはず」。

 加納俊輔、迫鉄平、上田良によるユニット、THE COPY TRAVELERSは、これまで「コピー」という行為の可能性を探求してきた。

 本展では、3人がコピー機でコラージュをつくり続ける様子を映した映像作品や、ガラスのテーブル上に作品を並べたインスタレーションなど、THE COPY TRAVELERSの活動を端的に伝える作品が目をひく。また、タイ・バンコクの旅で3人が出会った大量のイメージからつくられたというライトボックスの作品では、図像の意味をコピーと切り貼りによって引き剥がすという実践が試みられている。

THE COPY TRAVELERSの展示風景

 2014年に大谷将弘と今福華凜によって創設されたファッションブランド・PUGMENTは、ファッションにまつわるイメージと人との関係性に着目しながら、衣服を通じて既存の価値に対する新たな視点を提供し続ける。

 本展では、Tシャツにプリントするシルクスクリーンの機械を、紫色のライトで照らしたインスタレーションを展示。敗戦後、アメリカの影響から日本人がTシャツを着ることで始まったストリートファッションの歴史に注目した本作は、原宿や代々木といった米軍が駐留していた場所を生きた人々の物語が、プリントというかたちでTシャツと一体になる。

 なお11月17日には、PUGMENTの2020年春夏コレクション「Purple Plant」のショーもこの展示室で開催。作品とファッションショーの共鳴を予感させる。

PUGMENTの展示風景

 透明なフィルムに陰陽を反転させたドローイングを描き、印画紙に現像する「フォトグラム」を制作する三宅砂織。

 本展の作品は、1936年のベルリンオリンピックに体操選手として参加し、その後1964年の東京オリンピックの運営に関わった「ある男性」の遺品と、三宅が出会ったことで生まれた。世界に共有されたオリンピックの光景を、個人的な眼差しを求めるように三宅は描き映し、フォトグラムに仕上げている。また、三宅が「ある男性」がかつて訪れたポツダム広場に赴き制作した映像作品も上映される。

三宅砂織の展示風景

 吉増剛造プロジェクト|KOMAKUS+鈴木余位は、詩人・吉増剛造の日々の表現活動を記録・共有する目的で、映像作家の鈴木余位、音響チームのKOMAKUSの協働により進められてきたプロジェクトだ。

 鈴木余位は、吉増が細い罫線を引いた紙に詩篇を書写する様子や、復興の進む宮城・石巻で金華山と対話しながら詩を完成させる様子をとらえた映像作品を制作。KOMAKUSは、吉増が「声ノート」と呼ぶ大量の録音データを、中古スピーカーの集合体によって無限のエコーとしてつくりだすインスタレーションを展示している。

鈴木余位の《A View of Mademoiselle Kinka》(部分)
KOMAKUS《GHOST CUBE》の展示風景

 一貫してドローイングと言語の関係性を主題としてきた鈴木ヒラクは、枯葉の葉脈をつなぎながら土に埋め込み、線だけを掘り起こすという、初期から手がけてきたシリーズの新作を発表。また、世界各地の遺跡で収集した「人類が引いた線」をもとに、光を反射する線と点によって描れた新作ドローイングも展示される。

 鈴木は12月15日にはサウンド・アーティストの鈴木昭男とのセッション、20年2月2日には複数のアーティストとともに行うパフォーマンスを予定しており、ドローイングの新たな可能性の提示が期待できそうだ。

鈴木ヒラクの展示風景

 つくることから「私」という限定的な存在を乗り越えようとする、アーティストたちの様々な実践を見られる本展。訪れる人に、多くの気づきと示唆を与えてくれることだろう。