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窓をめぐるアートと建築の旅。「窓展」が東京国立近代美術館でスタート

人々の暮らしに身近な「窓」に焦点を当て、国内外の芸術・建築作品を紹介する「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」が東京国立近代美術館で開幕。絵画や写真、映像、インスタレーションなどジャンルを超えた作品が集結する本展の見どころは?

藤本壮介《窓に住む家/窓のない家》(2019)の展示風景

 光や風を取り込んだり、外の眺めをもたらしたりと、古くから人々の生活に深く関わってきた「窓」。これに焦点を当て、ジャンルを超えて国内外の芸術・建築作品を紹介する「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」が東京国立近代美術館でスタートした。

 本展は同館のキュレーションと、「窓学」総合監修を務める建築史家・建築批評家の五十嵐太郎による学術協力で実現したもの。「窓学」は、窓をアカデミックに探求する学際的な取り組みとして2007年にスタート。17年には10周年を記念し、レアンドロ・エルリッヒらが参加の「窓学展―窓から見える世界―」をスパイラルガーデンで開催した。

会場風景より、「窓と建築の年表」

 本展でまず注目したいのは、東北大学 五十嵐太郎研究室が制作した全長12メートルにおよぶ年表だ。ここでは古代から現代まで、時代や地域ごとに多様な変遷を遂げた美術における窓と、技術の進歩とともに変化してきた建築における窓の歴史をたどることができる。また反対側の壁には、17~18世紀の窓に関係する貴重書に加え、ル・コルビュジエやルイス・カーンによるドローイングや設計案が並ぶ。

会場風景より、窓のドローイングや設計案が並ぶ

 続く3~4章「窓の20世紀美術」では、絵画を中心に展示。マティスやボナールらによる、絵画のなかに画中画のようなかたちで窓を描いた作品に加え、マーク・ロスコ、ジョセフ・アルバース、パウル・クレーらの抽象画、そしてヴォルフガング・ティルマンスの写真までをじっくりと楽しみたい。

会場風景より、左からアンリ・マティス《待つ》(1991-92)、《窓辺の女》(1920)、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー《日の当たる庭》(1935)

 5章「窓からのぞく人 Ⅰ」では、幼少時に満州のレストランから第2次上海事変の光景を見た記憶をもとに作品を制作する林田嶺一の作品を展示。また6章では写真家・奈良原一高の初期を代表する「王国」を紹介する。同シリーズは、男子修道院と女子刑務所という、外から隔離された世界に生きる人々の姿を映し出したものだ。

会場風景より、林田嶺一の作品群

 その先の展示室に出現するのは、空港の入国管理局を模した通路とゲート。これは陳劭雄(チェン・シャオション)、ギムホンソック、小沢剛の3名によるユニット「西京人」の作品《第3章:ようこそ西京に―西京入国管理局》だ。来場者は架空の国家「西京国」に入国する(その先の展示室に進む)ために、ある行為を係員に披露しなければならない。

会場風景より、西京人《第3章:ようこそ西京に―西京入国管理局》(2012)
会場風景より、タデウシュ・カントル《教室―閉ざされた作品》(1983-85)

 本展では映像作品も大きな見どころだ。第10章では「窓はスクリーン」と題し、70年代の久保田成子、ナム・ジュン・パイクや、コンピュータのデスクトップ上にフォルダやファイルが増殖する様子をとらえたJODIの作品を紹介。続く11章「窓の運動学」ではローマン・シグネールによるユーモアあふれる映像作品やインスタレーション《よろい戸》、ズビグニエフ・リプチンスキの《タンゴ》に注目してほしい。

会場風景より、手前がローマン・シグネール《よろい戸》(2012)

 そして最後の展示室にあるのは、約35パーセントは鏡のように像を映し、65パーセントは向こう側が透けて見えるという特殊なガラスを使用したゲルハルト・リヒター《8枚のガラス》。次々とイメージが生まれる原理を示す同作は、リヒターの創作の源泉としての「窓」と言えるだろう。

会場風景より、ゲルハルト・リヒター《8枚のガラス》(2012)

 美術館の前庭には、建築家・藤本壮介による《窓に住む家/窓のない家》が出現。藤本が設計した住宅「House N」(大分県、2008)のコンセプトモデルである本作は、大きな窓がいくつも開いた箱が入れ子構造を持つ。実際に内部に入って、内と外の距離感の変化や窓の働きを感じてみてほしい。

 また会場エントランスでは「窓学の視点から見る窓展」というリーフレットも配布されている。ひと通り作品を楽しんでから、この冊子を持って「窓学」の視点からもう一度展覧会をめぐってみてはいかがだろうか。

藤本壮介《窓に住む家/窓のない家》(2019)の展示風景

編集部

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