ゲルハルト・リヒターの日本では2年ぶりとなる個展「PATH」が、東京・六本木のワコウ・ワークス・オブ・アートで開催される。
リヒターは1932年旧東ドイツ・ドレスデン生まれ。60年代前半から独自のスタイルで制作を始め、写真のブレやボケを描いた「フォト・ペインティング」や、豊かな色彩による「アブストラクト・ペインティング」などの代表作を手がけた。
日本では、97年に第9回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したほか、2005年には金沢21世紀美術館とDIC川村記念美術館で初の回顧展を開催。18年には、国立西洋美術館の「リヒター/クールベ」展で作品が紹介された。本展「PATH」は2年ぶり、同ギャラリーでは11回目の個展となる。
本展の中心となるのは、世界初公開の最新エディション作品《PATH》。同作は、すべて同じ風景写真を印刷したインクジェットプリントの上に、1点ずつ異なるストロークでスクラッチの痕を施したもの。今回は、ドイツに残した1点をのぞく24点が一挙に展示される。
《PATH》のベースとなっているのは、リヒター自身がイタリア北部の保養地・マッジョーレ湖の湖畔で、森の小径を撮影した風景写真。またインクジェットプリントを引っ掻く手法は、今回初めて用いられる表現だという。同作では、リヒターが生涯にわたって追求する「イメージ」への問いかけが、紙とインクという新しい関係のなかで実践されるさまを見ることができる。
それに加え、2012年の同ギャラリーでの個展「New strip paintings and 8 glass panels」で発表された、大型のガラス立体作品《8 Glass Panels》が特別に再展示。会場では、同作と周囲に展示されるインクジェットプリントとの関係によって、イメージの表出と消失への問いかけが可視化されるだろう。
なお本展にあわせて、《PATH》全25点と日本未公開の作品7点を掲載した展覧会カタログ『Gerhard Richter PATH』が刊行予定となっている。