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2019.10.12

絵画と陶磁器の共演に注目。「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」がBunkamura ザ・ミュージアムで開幕

建国300年を迎えるヨーロッパの小国・リヒテンシュタイン。世界でも屈指の規模を誇るその個人コレクションを紹介する展覧会「ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝」が、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムでスタートした。

展示風景より、中央がウィーン窯・帝国磁器製作所 ヨーゼフ・ガイアー《金地花文クラテル形大花瓶》(1828頃)
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 リヒテンシュタインという国をご存知だろうか。世界で唯一、侯爵家(君主)の家名が国名となっているリヒテンシュタインは、スイスとオーストリアに挟まれた小国。世界でも屈指の規模を誇る個人コレクションを有し、その華麗さは宝石箱に例えられるほどだ。

 そんな侯爵家秘蔵の油彩画や陶磁器など、約130点を紹介する展覧会「ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝」が東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開幕した。会期は12月26日まで。

会場風景

 リヒテンシュタイン侯爵家が収集活動を始めたのは14世紀頃から。「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」という家訓を遺したカール・オイゼンビウス侯(1611~1684)の子、ヨハン・アダム・アンドレアス侯(1662~1712)の注力により、約3万点におよぶ至宝の数々がいまに至るまで引き継がれている。

 本展は、侯爵家の人々の肖像画を展示する第1章からスタート。ベートーヴェンのよく知られた肖像画を描いたヨーゼフ・カール・シュティーラーの作品など、貴族生活の雰囲気を表した絵画を紹介する。

展示風景より、手前がヨーゼフ・カール・シュティーラー《リヒテンシュタイン侯爵家出身のエスターハージー伯妃ゾフィーの肖像》(1830頃)

 第2章では宗教画、続く第3章では神話画・歴史画にフォーカス。ここではルーカス・クラーナハ(父)の《聖バルバラ》(1520以降)やペーテル・パウル・ルーベンスと工房《ペルセウスとアンドロメダ》(1622以降)いった北方芸術の巨匠による作品だけでなく、イタリア・ルネサンスやバロックの作品など、多様なコレクションの魅力に触れることができる。

展示風景より、左がペーテル・パウル・ルーベンス《聖母を花で飾る聖アンナ》(1609-10頃)

 とくに目を引くのは、第4章・第5章に登場する陶器の数々。18世紀以降にヨーロッパで陶器の生産が始まるまで、陶器は金と等価とされるほど貴重なものだった。第4章では、中国や日本から輸入した磁器に金属で装飾を施したものを数多く展示。西洋と東洋の出会いを、器の数々で楽しみたい。

会場風景
展示風景より、右が中国・景徳鎮窯(金属装飾=イグナーツ・ヨーゼフ・ヴュルト)《青磁金具付大壺》(磁器=清王町(1644-1912)、金属装飾=1760-70頃)

 また第5章では1718年、ハプスブルク家のもと帝都として栄えたウィーンにデュ・パキエが設置した磁器工房の作品を紹介する。リヒテンシュタイン家は同工房の磁器のなかでも、とくに華やかで技巧を凝らした作品を多く収集。当時貴重とされたホットチョコレートを飲むためのカップ「トランブルーズ」などに施された装飾からは、日常のなかにも美しさを求めた当時の生活を垣間見ることができる。

展示風景より、中央がウィーン窯(デュ・パキエ時代)《カップと受皿(トランブルーズ)》(1725頃)

 続く第6章では、大貴族として都市で生活を送る侯爵たちに安らぎを与えた風景画を紹介。風景画は16世紀最後の数十年に、背景ではなくひとつの絵画分野として独立を果たした。ここではアルプスの山々の雄大な姿を描いた作品や、当時のウィーンの街並みを細かく再現した磁器《ベルヴェデーレからの眺望が描かれたコーヒーセット》などを見ることができる。

会場風景

 そして最後の第7章では、侯爵家コレクションが誇る花を描いた作品を一挙に展示。フェルディナント・ゲオルグ・ミュラーを代表する当代の人気画家たちが描く花々を楽しみたい。なかでも一番最後に展示されている《金地花文ティーセット》は、12客のティーカップと受け皿すべてに異なる絵柄が入ったものだ。

 本展では、所蔵品の絵画とそれを元に絵付けした陶磁器をあわせて紹介していることもポイント。ふたつの共演が誘う宮廷空間への旅を、心ゆくまで堪能してほしい。

展示風景より、左からウィーン窯・帝国磁器製作所 ヨーゼフ・ニッグ《白ブドウのある花の静物》(1838)、《黒ブドウのある花の静物》(1838)
展示風景より、ウィーン窯・帝国磁器製作所 アントン・デーリング、イグナーツ・ヴィルトマン《金地花文ティーセット》(1815)