世界で唯一、侯爵家の家名が国名となっているリヒテンシュタイン。スイスとオーストリアに挟まれた小国でありながら、世界屈指の規模を誇る個人コレクションを有し、注目を集めている。
今回、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムでは、Bunkamura創立30周年とリヒテンシュタイン建国300年を記念して、「ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」を開催(10月12日〜12月26日)。7章に分けて、リヒテンシュタイン侯爵家秘蔵のルーベンスやヤン・ブリューゲル(父)、クラーナハ(父)を含む北方ルネサンス、バロック、ロココを中心とする油彩画や、ヨーロッパでも有数の貴族の趣向が色濃く反映されたウィーン窯などの優美な陶磁器など計約130点を紹介していく。
侯爵家は、500年以上前に芸術品の収集をスタート。何代にもわたって、歴代の侯爵が時間をかけてコレクションを形成してきた。本展は、そんな侯爵家の人々の肖像画と、貴族生活の雰囲気を表した絵画を紹介する第1章から始まる。
第2章は宗教画、第3章では神話画・歴史画にフォーカス。多様性に富んだコレクションの魅力に触れることができる。そして、ヨーロッパで大変な人気を博した東洋の磁器や、華やかで技巧を凝らした作品を得意とするウィーンの磁器工房を紹介する第4章・第5章へと続く。中国や日本から大量に流入したのち、ヨーロッパ人の趣味に合わせて金属装飾された磁器の美しさを堪能したい。
第6章では、大貴族として都市で多忙な毎日を送る侯爵たちに安らぎを与える風景画の数々が展示される。アルプスに抱かれた領地を有するリヒテンシュタイン侯爵家にとって、アルプスの山々の雄大な姿は特別な意味を持っていたことがうかがえる。
最終章は、陶板画や磁器の絵柄として描かれたものを含む花の静物画が集結。フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラーをはじめとする人気画家の作品は見どころだ。絵画と陶磁器の美しい共演は、見る者を貴族の宮廷空間へと誘うだろう。