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ティノ・セーガル、記録を残さないアーティストが見せる「ライブワーク」

杉本博司が生み出した巨大施設「小田原文化財団 江之浦測候所」で、初めてとなる現代美術のプロジェクト「ティノ・セーガル@江之浦測候所 yet untitled」がスタートした。記録を残さないことで知られるティノ・セーガルは何を見せるのか?

 

ティノ・セーガル

 現代美術家・杉本博司による“作品”とも言える巨大な施設「小田原文化財団 江之浦測候所」。ここで、2017年10月の開館以来初めてとなる現代美術のプロジェクトがスタートした。

 プロジェクトの名前は「ティノ・セーガル@江之浦測候所 yet untitled」。国際的に活躍するアーティスト、ティノ・セーガルの単独プロジェクトだ。

 ティノ・セーガルは1976年ロンドン生まれのアーティスト。絵画や彫刻、インスタレーションといった「もの」としての作品・展示は一切行わず、「構築された状況」と呼ぶ、作家の指示に基づいたパフォーマーの動きで観客をある体験に誘う作品で知られている。作品は写真や映像で記録されることがなく、その場でしか見ることができない。

江之浦測候所の光学硝子舞台

 本展では、江之浦測候所の内部にある「野点席」を会場に、1〜3人の「インタープリター」が、それぞれの身体と声を使って「ライブワーク」を展開。そこから眺望できる水平線や風が木々を揺らす音、虫や鳥の声と一体となるかのような空間が生み出される。

 「茶道」に強い興味があったというセーガル。今回、インタープリターたちの動作には、正座を思わせるような地に膝をつく行為や、茶を点てるかのような手の動きなどを見ることができる。こうしたインタープリターたちの動きには完璧なシナリオがあるわけではなく、状況にあわせて変化するという。またその行為の長さも決まっていない。

「私の作品は4次元で、写真のように2次元の作品ではありません。テキストで記録されるのはもちろん大丈夫ですが、写真や映像で撮られる=2次元のものとして残すのは違うと思うんです」。こう語るように、セーガルの作品はその場で見てこそ意味のあるものだ。杉本博司とティノ・セーガルという、ふたりの才能が化学反応を起こす今回のライブワーク。ぜひその目で見てほしい。

江之浦測候所の明月門

編集部

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