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かつてないカルティエ展が開幕。展示構成は杉本博司の新素材研究所

東京・六本木の国立新美術館で、カルティエの現代作品にフォーカスした世界初の展覧会「カルティエ、時の結晶」が開幕した。会場構成を新素材研究所(杉本博司+榊田倫之)が手がけた本展のハイライトをお届けする。

 

会場風景

 1847年にパリで創業され、世界を代表するジュエリーブランドとして知られる「カルティエ」。その1970年代以降の現代作品にフォーカスした世界初の展覧会「カルティエ、時の結晶」が、東京・六本木の国立新美術館で開幕した。会期は12月16日まで。

 これまで、カルティエは世界の著名な美術館で展覧会を開催してきたが、今回の展覧会では、現代作品を紹介するだけあって、世界中の個人所蔵の作品を展示。総出品数の半分以上を個人蔵が占めるという。

 また、従来のカルティエ展は、その歴史に沿って語られる展示構成が中心だったが、本展では「時間」を軸に、色や素材、フォルムといった単位から展示を構成。杉本博司と榊田倫之の新素材研究所が初めて美術館展覧会の構成を手がけている。

 会場はまず、杉本博司が手がけた巨大な時計《逆光時計》(2018)からスタート。本作は、100年以上昔の時計を素材としたもので、その名の通り逆進する時計を起点に、「物質の世界」へと入っていく。

展示風景より、杉本博司《逆光時計》(2018)

 「時の間 ミステリークロック、プリズムクロック」と題された序章では、展示スペースが円形に構成され、カルティエが手がけた時計の数々が並ぶ。それぞれが縦に伸びた12本の白いベールの中にひっそりと展示されており、それらは光の柱のようにも見える。「時」をテーマにした本展を象徴するような場所だ。

「時の間 ミステリークロック、プリズムクロック」の展示風景
「時の間 ミステリークロック、プリズムクロック」より大型の「ポルティコ」ミステリークロック(1923)

 展覧会は、この円形の展示室を囲むように1~3章で構成されており、「色と素材のトランスフォーメーション」「フォルムとデザイン」「ユニヴァーサルな好奇心」の各章でそれぞれに異なる展示空間が広がる。また随所に日本美術とジュエリーのコラボレーションを見ることができ、杉本博司ならではの趣向を楽しめるのも本展の特徴と言えるだろう。

展示風景より

 榊田は今回の会場構成について、「宝石は権力や富など人間模様が背景にある。そうした背景を横に置いて、宝石を色や素材、幾何学など最小限の単位で素数化した。鉱物を見るように、純粋な宝石の美しさを見てもらおうと考えてきた」とコメント。2000平米、高さ8メートルという広大な空間でジュエリーという「小さいものをいかに見せるか」が課題だったといい、「視線の移ろいに苦労したとともに、それが空間の魅力になっている」と話す。

 また眩い宝飾品を支えるデコルテや腕などを模した「トルソー」にも注目したい。これらは仏師による特注品で、屋久杉や神代杉などを素材として使用。すべてが手づくりのユニークな存在だ。

展示風景より

 また土台には光学ガラスや伊達冠石などが使用されており、自然と人工的の対比がより強調されるようになっている。

「時」を重要なテーマに活動している新素材研究所だからこそ可能になった本展。ハイジュエリーとの巧みなコラボレーションに目を凝らしてほしい。

光学ガラスに置かれた《2枚の「フェーン(シダ)の葉」ブローチ》(1903)

編集部

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