生体とオブジェの境界を超えて。名和晃平、SCAI THE BATHHOUSEで3年ぶりの新作展「Biomatrix」を開催

パリ・ルーヴル美術館ピラミッド内での特別展示(〜2019年1月14日)をはじめ、国内外で注目を集める名和晃平。シリーズ「LIQUID」(2003-)の最新作を中心とした新作展「Biomatrix」が東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで開催される。会期は10月10日〜12月8日。

©︎Kohei Nawa Photo by Nobutada OMOTE | SANDWICH

 デジタル画像の「Pixel(画素)」と、生物の最小構成単位「Cell(細胞)」をかけ合わせた独自の概念「PixCell」をもとに、作品を通して多彩な表皮のイメージを生成する名和晃平。新作展「Biomatrix」が東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで開催される。

 名和はこれまで、ホワイトキューブに流れ続ける線状の黒いオイル《Force》(2015)や、際限なく生成し続ける泡沫《Foam》(2013)など、有機的な現象を現代の化学素材で再現。リアルとバーチャル、ミクロとマクロ、自然と人工といったあらゆる対立を無効化してきた。

 「自然も人工物もすべては粒子の集合である」という認識を軸に制作する名和の彫刻は、固体と液体の区分を持たず、空間を彫塑する。本展の中心となる「LIQUID」(2003-)は、表面張力や流動性などの物理現象を生かし素材の特性を開花させた、液状素材を使用する作品シリーズのひとつだ。

 マグマや血液のように終わりのない循環を続けるシリコーンオイルに発生させた気泡(セル)は、鑑賞者の予測を裏切る速度で液面に動きを描く。そして、気泡の生成と消滅の繰り返しによる変化の連続は、生体とオブジェの境界を超えて鑑賞者に迫る。

 パリ・ルーヴル美術館ピラミッド内での特別展示をはじめ、国内外で話題を集める名和の最新作に注目したい。

編集部

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