2017.5.8

技と技の共演。ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーと日本の工芸が京都でコラボレーション

京都国立近代美術館で2017年4月29日に「技を極める-ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸」展が開幕した。フランスを代表するハイジュエリーメゾンと日本工芸が共演を果たした本展の見どころとは?

会場風景。中央に見えるのはゴールド、ロッククリスタルなどでできた「テーブルクロック」(1957)
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 1200年以上の昔から都として栄えた京都では、衣食住にまつわる最高級品が数多く生み出されてきた。そのいっぽう、フランスを代表するハイジュエリーメゾンのヴァン クリーフ&アーペルでは、熟練した職人が連綿と技を伝えている。

 ヴァン クリーフ&アーペルによる約270点のハイジュエリーと、約70点の日本の工芸作品が展示される本展では、「技を極める」をテーマに、ヴァン クリーフ&アーペルの秀逸な作品が伝える「技」と、長い歴史のなかで生まれた七宝や陶芸、金工などの日本工芸の「技」の対比や結びつきを紹介。加えて、現代日本の工芸作家の森口邦彦(重要無形文化財「友禅」保持者)、北村武資(重要無形文化財「羅」「経錦」保持者)、中川清司(重要無形文化財「木工芸」保持者)、服部峻昇(漆芸)らの作品も展示し、ハイジュエリーと工芸のコラボレーション作品も特別出品されている。

 ヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEOのニコラ・ボスは本展開催にあたり「ヴァン クリーフ&アーペルの歴史、奥深さをご覧いただければと思います。西洋のジュエリー、そして京都の伝統工芸との対話を楽しんでほしい」と語る。

ヴァン クリーフ&アーペルプレジデント兼CEOのニコラ・ボス

 展覧会は3つのセクションで構成。第1章「ヴァン クリーフ&アーペルの歴史」では、1907年頃から現代までの作品が並び、ヴァン クリーフ&アーペルのデザインの変遷や、極められた技術に焦点を当て、その歴史を概観する。

会場風景
ヴァン クリーフ&アーペルの鳥かご(1935年) 

 続く第2章「技を極める」では、ヴァン クリーフ&アーペルと日本の工芸の超絶技巧が共演。近年、大きな注目を集めている明治時代に盛んにつくられた「超絶技巧」と呼ばれる作品の数々。ここでは安藤緑山をはじめ、十二代 西村總左衛門などによる作品が、ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーとともに展示されており、「技を極める」2つの国のクラフトマンシップを見てとることができる。

正阿弥勝義 鯉鮟鱇対花瓶 明治時代
(左から)ロゼット クリップ、安藤緑山《三茄子》、安藤緑山《仏手柑》、パスパルトゥー ジュエリー

 そして最終章「文化の融合と未来」では、現在の日本で活躍している森口邦彦ら現代の工芸作家と、ハイジュエリーがコラボレーションを果たした。制作された年代も国も違うもの同士が、溶け合うように展示された空間は必見だ。

北村武資による生地とジュエリーが並ぶ

 本展の会場設計は、2013年にロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオンも手がけた建築家・藤本壮介が担当。今回の展示デザインについては「ジュエリーや工芸に力があるので、展示構成はなるべく削ぎ落としてシンプルにしながら、そこに驚きのある空間をつくる、ということを考えました」と語る。その言葉の通り、黒で統一された空間にはガラスケースが多様され、ジュエリーや工芸の存在感を効果的に引き立てている。

セクション1では日本産の檜でつくった18メートルのカウンターが設置された
会場にはパリの工房を再現したコーナーも

 なお本展では音声ガイドを女優・松雪泰子が担当。展覧会開幕に際し「荘厳で静謐な展示空間が広がるなか、ヴァン クリーフ&アーペルの美しい作品と日本の伝統工芸の数々が展示され、非常に繊細な技術が集約されています。私はよく作品のストーリーを知りたいと感じるのですが、今回の音声ガイドでは作品の物語もお話をさせていただいているので、そのストーリーを聞きながらより深く展覧会を楽しんでいただければと思います」と語っている。

(左から)ヴァン クリーフ&アーペル ジャパン プレジデント アルバン・ベロワー、京都国立近代美術館館長・柳原正樹、京都国立近代美術館学芸課長・松原龍一、女優・松雪泰子、ヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEO ニコラ・ボス、建築家・藤本壮介