鳥が棲む色絵の世界。菊池寛実記念 智美術館で「鳥々 藤本能道の色絵磁器」展が開催中【2/2ページ】

色絵翡翠文八角筥 1979 6.6×19.0×19.0㎝
撮影=渞忠之

 写実的な文様を可能にしているのは、絵具や描法にもたらした技術革新だ。藤本は、それまで原色のみの表現であった色絵に、九谷焼に用いられる五彩、赤、黄、緑、紺青、紫色の絵具を混色することによって中間色を生み出した。

 複雑な色彩を駆使し、絵具の濃淡で立体的に描き出される鳥の文様。その背景には「釉描加彩(ゆうびょうかさい)」と名付けた独自の描法で、色絵の層の下に器の奥へと広がる風景が描かれる。

雪白釉釉描色絵金彩五位鷺図扁壷 1990 32.6×30.2×18.7㎝
撮影=渞忠之
雪白釉釉描色絵鶉図四角隅切筥 1990 7.0×25.9×26.2㎝
撮影=渞忠之

 現代の陶芸を専門にする同館のコレクションにおいて、質、数ともに重要な位置を占めるのがこの藤本の作品であるという。創設者の菊池智(きくち・とも、1923~2016)との親交によって形成されたコレクションには、1974年以降、充実期に制作された色絵磁器作品を中心に約130件が収蔵されている。

 本展では、1974年から最晩年までの作品を紹介し、藤本の色絵における表現と技術の関係にせまる。

霜白釉釉描色絵金銀彩炎と蛾図扁壷 1991 26.0×24.8×16.0㎝
撮影=渞忠之
展示風景より