吉田紳平の新作展「My husband」で見せる記憶と時間の交錯

東京のhide galleryで、吉田紳平の個展「My husband」が12月22日まで開催されている。本展では、吉田の代表的なポートレイトシリーズの油彩画に加え、インスタレーション作品も披露。過去の記憶と現在の視点を交錯させ、鑑賞者に新たな感覚をもたらす作品群が並ぶ。

 吉田紳平の個展「My husband」が、hide galleryにて開催されている。会期は12月22日まで。

 吉田は1992年、奈良県に生まれ、2014年に京都芸術大学を卒業後、東京を拠点に活動している。主にファウンドフォトを題材にしたポートレイトシリーズや、プライベートな体験をもとにしたインスタレーション作品を手がけており、国内外で注目されているアーティストだ。

吉田紳平 All at Dawn 2024 キャンバスに油彩 22✕27.3cm

 本展は、吉田にとって同ギャラリーでの初個展であり、約2年ぶりとなる東京での新作個展でもある。展示には、吉田の代表作であるポートレイトシリーズの油彩画をはじめ、ギャラリーの空間に合わせたインスタレーション作品が並び、彼の独特な視点を余すことなく表現している。

 吉田の作品は、静かで忘れ去られた時間の気配を感じさせる。キャンバスに描かれた色彩は、日常の一瞬を切り取るかのようであり、その画面には、儚さと同時に永遠の時間が宿るような、相反する時間の流れが感じられる。鑑賞者は、ぼんやりとした色合いのなかに、かつて存在した「誰か」の姿を重ね合わせ、デジャヴのような感覚を抱くことになる。

吉田紳平 It was poetry 2024 キャンバスに油彩 33.5✕33.5cm

 「My husband」と名付けられた本展では、過去と現在、見えるものと見えないものが交錯し、鑑賞者に日常のなかに隠れた意味を探るきっかけを与える。このテーマは、吉田の個人的な体験、とくに祖母の死という出来事に強く影響を受けており、ポートレイトシリーズを通して生命の儚さと時間の重みを静かに浮かび上がらせる。

 本展を通じて、吉田が表現する「存在と不在」「記憶と忘却」というテーマに深く触れることができる。hide galleryという静謐な空間のなかで、その情景がどのように展開されるのか、ぜひ現地で確かめてほしい。

吉田紳平 My wife 2024 キャンバスに油彩 122✕145.5cm

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