光州ビエンナーレ日本パビリオン、2作家が伝える歴史を紡ぐ重要性【2/4ページ】

 これとは別に、注目すべきなのがパビリオン展示だ。光州ビエンナーレでは2018年からパビリオンが立ち上がり、年々規模が拡大。今回は前回の9ヶ国から大幅増となる31のパビリオン(22の国と都市、9つの機関)が参加し、それぞれ特色ある展示を繰り広げている。そのなかのひとつが、初参加となる日本パビリオンだ。

 今回の日本パビリオンは国主体のものではなく、出展・主催者は福岡市。福岡市は2022年には「Fukuoka Art Next(FaN)」事業をスタートさせ、市内に交流拠点となる「Artist Cafe Fukuoka(ACF)」をオープンするなど、アーティスト支援に積極的に取り組む姿勢を打ち出してきた。また福岡アジア美術館をはじめ、これまでアジアとの交流を盛んに行ってきた歴史を持つことから、このパビリオンを福岡市が担うこととなった。同市は、ACFにおける海外展開事業のひとつとして国際美術展に出展することはアーティストの成長支援のみならず、今後の現代アートを通じたアジアとの交流に貢献していく契機となると期待を寄せている。

 日本パビリオンの会場は、ビエンナーレ本会場とは異なる光州市内の2ヶ所。批評家で文化研究者の山本浩貴がキュレーションを担い、内海昭子と山内光枝が参加。「私たちには(まだ)記憶すべきことがある」をコンセプトに掲げる。光州の地に歴史的に埋め込まれた無数の声と沈黙に耳を傾けながら、そのいっぽう、現在進行形で生起しているグローバルな事象に接続する回路を開くことも目指すというものだ。

 今回、内海と山内は作品制作のために何度も光州を訪れ、朝鮮美術文化研究者である古川美佳や東京大学東洋文化研究所教授の真鍋祐子らからレクチャーも受けた。そのリサーチや滞在の経験が、新作に生かされている。

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