物語性と社会風刺に満ちた世界観を、力強くキャンバスに表現するアーティスト・大岩オスカール。その個展「乱流時代の油ダコ」が、渋谷ヒカリエで開催される。会期は4月27日〜5月12日。
大岩は1965年ブラジル・サンパウロ生まれ。独特のユーモアと想像力で、サンパウロ、東京、ニューヨークと居を移しながら制作を続けている。緻密なタッチや鳥瞰図的な構図を使い、新聞記事やネットの中に社会問題の糸口を見出し、入念なリサーチをもとに大画面をしあげる作風で知られており、2019年には金沢21世紀美術館で個展「光をめざす旅」を開催。同展では15万人以上の来場者を記録した。
今回の個展は、1999年に大岩が描いた「水族館」という作品に登場した空想の水性生物、タコのような「オイル・オクトパス」を中心としたものだ。大岩は本展に際し、こう述べている。「このタコが現在のこの世界を観察していたなら、どのように思うだろうか?この質問が今回の展覧会のテーマになっています」(ステートメントより)。
環境問題が深刻化の一途を辿り、様々な地域で戦争が起こる現代は、まさに「乱流の時代」。「オイル・オクトパス」は、こうした乱流の時代を生き延びていくキャラクターであり、社会に生きる私たち一人ひとりでもあるように見える。
本展では、「近代世界生物」「ヘルズキッチン・シリーズ」「マスコット・シリーズ」「サイレント・オーシャン」「ライト弁当・シリーズ」という、それぞれが関係を持つシリーズを展覧。渋谷ヒカリエ8/のイベント+ギャラリースペースでの展示をメインとしながら、B3階正面入口、2階貫通通路、7階パブリックスペースなど、館内を歩きながら作品を楽しめる構造となる。
とくに4階ヒカリエデッキでは、幅10メートル、高さ3メートルという大規模でストリートグラフィティのような新作をお披露目予定。この作品は2021年にスタートした「ヒカリエデッキ壁面アートプロジェクト」と連携して制作されるもので、アートを通じて「公共空間の中にも自由な個人の表現が生かされる場をつくりたい」という、渋谷ヒカリエの思いを受けて制作される。