都市の移り変わりを見つめる4組の作家。トーキョーアーツアンドスペース本郷で開催中の「凪ぎ、揺らぎ、」展をチェック

トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)とカナダ・ケベック州との本格的な交流5周年を記念し、4組の作家による作品を紹介する交流展「TOKAS Project Vol. 6『凪ぎ、揺らぎ、』」が開催中。会期は11月12日まで。

展示風景より、國分郁子の作品群 撮影=加藤健

 東京・本郷のトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)で、TOKASとカナダ・ケベック州との交流記念展「TOKAS Project Vol. 6『凪ぎ、揺らぎ、』」が行われている。会期は11月12日まで。

 TOKAS Projectは、2018年から始まった国際的な交流を促進し、多文化的な視点を通じて、アートや社会など、様々なテーマについて思考するプロジェクト。本展は、これまでTOKASのレジデンス・プログラムに参加したケベック拠点のアーティストを中心とした交流展となっている。

展示風景より、ミシェル・ウノー《イン・プログレス》(2012-present) 撮影=加藤健

 TOKASとケベック州との交流は2015年にさかのぼり、以降、毎年ケベックを拠点とするアーティストを東京に受け入れてきた。2017年には正式に協定を結び、1年に1組ずつ相互にアーティストの派遣を行っている。2023年度までに、16組のケベック拠点のアーティストがTOKASレジデンシーで、また、5名の日本人アーティストがケベックのセンター・クラークでの滞在制作に参加した。

展示風景より、ジャン=マキシム・デュフレーヌ&ヴィルジニー・ラガニエール 撮影=加藤健

 本展ではそのなかから、都市の移り変わりと、それに伴う文化や環境への順応を見つめた4組の作家による作品を紹介。2017年から2019年にかけて、TOKASのレジデンス・プログラムに参加した、ジャン=マキシム・デュフレーヌ&ヴィルジニー・ラガニエール、ジェン・ライマー&マックス・スタイン、ミシェル・ウノーと、2022年にケベックへ派遣され滞在制作を行った國分郁子の計4組だ。

 都市化された労働環境へ順応するためにかかる負担に苛まれる人々の心理などについてリサーチを進めたデュフレーヌとラガニエールは、本展で写真や映像作品からなるインスタレーションを発表し、社会の未来と不確実性を提示。サウンド・アーティスト、ミュージシャンとして活動するライマーとスタインは、2019年に墨田区の工業地帯や河川敷で、明確な音色やテクスチャとして集めた街のざわめきやリズムを、今回の発表に向け、同じ場所に再訪して再録し、新たな展開を試みる。

展示風景より、左からジャン=マキシム・デュフレーヌ&ヴィルジニー・ラガニエール《VR Youth》(2019)、《フクロウ》(2019) 撮影=加藤健
展示風景より、ジェン・ライマー&マックス・スタイン《Sounding the City – 墨田区》(2019/2023) 撮影=加藤健

 2012年の初来日以降、定期的に東北地域を訪れ、その復興状況を記録しながら、津波被害を受けなかった日本のほかの地域についても、自然と現代性に関するプロジェクトを行っているウノーは、ジャーナリズムの観点と美術表現としてのドキュメントを鑑賞者に問いかける作品群を紹介。世界的評価を得るケベックのパフォーミング・アーツを代表するシルク・ドゥ・ソレイユの舞台を起点に、身体表現によって共有される感情や体験を、演劇的解釈を用いて制作する國分は、本展でサーカスの構成要素である「バランスの力学」に焦点を当てて絵画の支持基底面や重心が変化していく作品群を発表する。

展示風景より、ミシェル・ウノー《イン・プログレス》(2012-present) 撮影=加藤健
展示風景より、國分郁子の作品群 撮影=加藤健

 コロナ禍を経て、社会全体や人の意識を大きく揺るがす事象に誰もが直面する今日。空間、時間、音、感情、風景を切り取り、編み込んでいったアーティストたちの作品を会場で向き合ってほしい。

展示風景より、ジェン・ライマー&マックス・スタイン《Sounding the City – 墨田区》(2019/2023) 撮影=加藤健

編集部

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