TOKASの展覧会シリーズ「ACT」第2弾。田中秀介、広瀬菜々&永谷一馬、渡辺豪が見せる「停滞フィールド」とは?

2018年より東京・本郷のトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)でスタートした企画展シリーズ「ACT」(Artists Contemporary TOKAS)。その第2弾として3月22日まで開催予定だった「停滞フィールド」が、新型コロナウイルスの影響により中止となった。そこでここでは、田中秀介、広瀬菜々&永谷一馬、渡辺豪の3組が参加した展示の様子をお届けする。

広瀬菜々&永谷一馬《Still life》 撮影=加藤健

 TOKASのプログラムに参加経験のあるアーティストを中心に、その活動を紹介する企画展「ACT」(Artists Contemporary TOKAS)。(新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に伴う休館延長により本展は中止)

 本展のタイトルは、「停滞フィールド」。田中秀介、広瀬菜々&永谷一馬、渡辺豪の3組が参加している。

田中秀介の展示風景 撮影=加藤健

 「停滞フィールド」とは、SF小説やゲームなどで使用されている言葉。時間が停止している、もしくは極度に遅延されているような領域を表す。そこでは、物体が止まって見え、凝視できる状態になったり、あるいは時間の流れの鈍化により物体事態に歪みが生じたりする。そうした特殊な状態での体験は、既存の考えやこれまでの感覚を変化させる転機となるだろう。

 本展では、田中秀介、広瀬菜々&永谷一馬、渡辺豪の3組のアーティストが自らの観点から、時間の停止や停滞による差異やズレ、歪みを鑑賞者に提示し、対象を注視させているように見える。あらゆる事象が高速に処理されている現代社会において、時間や空間の認識を変容させることを試みる。

 例えば田中秀介は、ある一点を極端に大きく描いて強調することで、歪んだ空間や奇妙な現実感をキャンバスに生みだす。本展では、町を歩いていて出会った風景を描いた絵画作品など新作を中心に展示している。

田中秀介の展示風景 撮影=加藤健
田中秀介《横風情》 撮影=加藤健

 2007年にドイツに移住したアーティスト・デュオ、広瀬菜々&永谷一馬は、日用品などを変化させることで知覚を問いかける作品を制作。本展では、野菜や果物、コップなどを型取りした約300個の磁器からなるインスタレーション《Still life》を発表。磁器には、なんらかの力によって変形されたような凹みがあるが、それは磁器の配合を調整し、焼成するときの熱に反応して自然に生じた歪みだ。

広瀬菜々&永谷一馬《Still life》 撮影=加藤健
広瀬菜々&永谷一馬《Still life》(部分) 撮影=加藤健

 実際の風景や身近なものを3DCGで再現し、光学的法則から離れて変化する映像作品を制作してきた渡辺豪は、本展で本や洗濯物の山をモチーフにした新作映像インスタレーションを発表。それぞれに光が当たる順序や場所を組み換えることで、ものの空間性や時間性などを問いかける。

渡辺豪《積み上げられた本》 撮影=加藤健
渡辺豪《まぜこぜの山》 撮影=加藤健

 これまで公募展や海外派遣などを通してアーティストを継続的に支援し、その活動を紹介してきたTOKAS。今後も最新プログラムを会場で体験してほしい。

編集部

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