薄れゆく記憶をつなぎ止める。山本基個展「時に宿る-Staying in Time-」がYUKIKOMIZUTANIで開催中

「塩」を用いて床に巨大な模様を描くインスタレーションや、アクリル絵具や岩絵具を使用した平面作品などを発表する現代美術作家・山本基。その個展「時に宿る-Staying in Time-」が、ギャラリー・YUKIKOMIZUTANIで開催中。会期は5月6日まで。

展覧会イメージ

 「塩」を用いて床に巨大な模様を描くインスタレーション作品で知られている現代美術作家・山本基。その個展「時に宿る-Staying in Time-」が、東京・天王洲にあるギャラリー・YUKIKOMIZUTANIで開催されている。会期は5月6日まで。

 浄化や清めを喚起させる「塩」。山本は長い時間をかけて入念に作品を描き上げていく。完成した作品は展覧会最終日に鑑賞者とともに壊され、その塩を海に還すというプロジェクトも行ってきた。また、アクリル絵具や岩絵具を使用した平面作品やドローイングなども制作。緻密な模様が描かれたこれらの作品は、その想いが絶えることなく続いていく様を表し、強い生命力を示すよみがえりや再生、永遠を意味している。

 本展では、山本が近年強く意識している「時」や「季節」を手掛かりに、四季の移ろいを感じながら日記のように描き続ける様々な作品を展示。塩で数万枚の桜の花びらをつくるインスタレーションや、塩のスクリーンに投影するデジタルドローイングに加え、古くから再生のシンボルとして用いられてきた迷宮や渦巻きをモチーフにした平面作品、蝶をテーマにした新シリーズなどを見ることができる。

 山本は、本展について次のように述べている。「私は若くしてこの世を去った大切な人との思い出を忘れないため、忘却という自己防衛本能に抗うための仕掛けとして、描き続けてきました。しかし、時の流れは否応なく記憶を奪い去ろうとします。私はその現実とどう向き合うべきなのか。つくり続けることで、つなぎ止めることは出来るのでしょうか」。

 どのような素材を用いていても、山本は作品の細部にまでその想いを込めている。鑑賞者は山本の作品を通じ、無意識のうちにその想いを受け取ることになるだろう。そして、自身のなかにあるそれぞれの大切な人への想いに気付くことになるかもしれない。

 なお本展の最終日である5月6日には、塩を海に還すプロジェクトが実施される。一人ひとりの心の奥底にある命への情感に語りかける山本の作品を手がかりに、時とともに薄れゆく記憶と向き合ってみてはいかがだろうか。

編集部

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