誰もが知る文房具の「丸シール」。これを使い、独自の世界を表現するのがアーティスト・YUKINO OHMURAだ。
YUKINO OHMURAは東京生まれ。多摩美術大学在学中に、丸シールで夜景を表現する絵画を発表し、その独自性が話題を呼び、2012年の「Tokyo Midtown Award」でオーディエンス賞を受賞した。銀座三越や高崎市美術館、調布市文化会館などで個展を開催し、2018年には日本観光庁からの要請にてフランスで個展を開催。作品制作のみならず、シールを貼るだけで誰でも制作に参加できる観客参加型のワークショップの監修や、テレビ番組『プレバト!!』の丸シールアート査定の先生役として出演。バカラのビジュアル広告も務めるなど美術業界の枠を超えた活動を行うことで、多くの人に「アート」の面白さや表現する楽しさを伝えている。
そんなYUKINO OHMURAによる最新作が見られるのが、MU GALLERYで開催される個展「View Point-視点-」だ。本展では、代表作である都会の夜景シリーズをはじめ、逆光によって浮かび上がる人のシルエットを描く「人物シリーズ」、カメラのフォーカス機能を使いピントをあえてずらした風景を絵画のように描く「AFシリーズ」、そして昨年ウッドワン美術館で発表し話題を呼んだ巨大な夜景作品「just gold」など、新作旧作をあわせて約20点を発表。コロナ禍で直面した人との関わりの脆さや将来の不安、欺瞞に満ちた言論や環境に対する違和感を表現した作品群だ。
丸シールというあえて薄く、チープな素材を扱うことで、美術作品における価値をも問いかけるYUKINO OHMURA。本展に際し、次のような言葉を寄せている。
「絵画」というと絵の具で描いた絵を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、私は文房具の丸シールで絵画を制作しています。
大学で油絵を学んでいた頃、アートは誰もが楽しめるものと考えましたが、油絵具というものは誰もが触ったことのある画材ではなく、一部の専門的に学んだ人だけの技法であり、人々とアートを遠ざける要因ではないかと思うようになりました。
ある時、「描く」ことよりコンセプトを練って人々に面白いと思ってもらえるアイディアを考える方が好きだと気付き、自分自身のオリジナリティとアートを身近に感じて欲しいという思いから、誰もが知る丸シールという素材に辿り着きました。黒いキャンバスに色とりどりの丸シールで描く夜景は、離れて観ると写真さながらの圧巻の美しさです。しかし、近づいて見るとあくまで丸シールであり、同時に大量の電力を消費する街の明かりで構成される夜景の、金銭的な価値の矛盾や大量消費社会の違和感を表現しています。