マダガスカル出身で、現在パリとアンタナナリボを拠点に活動しているアーティスト、ジョエル・アンドリアノメアリソア。その日本初個展「THE GEOMETRY OF THE ANGLE AS POINT OF NO RETURN TO DRESS THE PRESENT」が、7月18日〜8月23日に名古屋のSTANDING PINEで開催される。
アンドリアノメアリソアは1977年、マダガスカル・アンタナナリボ生まれ。テキスタイル、紙、鉱物などの素材、または鏡、香水、切手などのオブジェクトを用いて制作された作品を手がけており、ファッションからデザイン、映像、写真、舞台美術、建築、インスタレーションまで様々な分野を横断しながら、人間の抽象的で曖昧な感情や物語を呼び起こす。
マダガスカルの美術学校を経て、2005年にパリ建築大学を卒業したアンドリアノメアリソアは、これまでイタリア国立21世紀美術館(ローマ)やハンブルガー・バーンホフ現代美術館(ベルリン)、スミソニアン博物館(ワシントンD.C.)、ポンピドゥー・センター(パリ)、ダラス・コンテンポラリー(ダラス)、森美術館(東京)など、世界各地の美術館やアートセンターで作品を発表してきた。
19年には、第58回ヴェネチア・ビエンナーレに国として初めて参加したマダカスカル館の代表作家として選出され、今年3月にはシドニー・ビエンナーレにも参加している。また、16年のアートフェア「Arco Madrid」で「Audemars Piguet Prize」を受賞し、19年のアート・バーゼル香港「エンカウンター」部門やフリーズ・ロンドンの特別企画「Woven」で作品を発表。そして、20年の「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」のファイナリストとして選出されるなど、国際的な評価も高まっている。
今回の展覧会では、アンドリアノメアリソアは「黒」と「白」の双対性をテーマに制作した作品を日本で初めて公開。ジョセフ・アルバースの作品の分析から始まるこれらの作品は、アンドリアノメアリソアによって美学的そしてファッションデザインの観点から再構築されたもの。素材の触覚と視覚は、布の芸術的なカテゴリーを分解することにより生みだされ、幾何学的な構成組織を再解釈することにより新しい抽象作品がつくりだされる。
1980年代から、ニューヨーク近代美術館で行われた「20世紀美術におけるプリミティヴィズム」展など、アフリカ現代美術の普遍性を訴え、そしてその魅力を紹介する展覧会が世界各国の美術館で開催されてきた。また、オクウィ・エンヴェゾーやトゥーリア・エル・グラウィなどアフリカ出身のキュレーターやアートフェアディレクターの国際的な活動の累積により、アフリカの現代アートシーンは近年、一躍脚光を浴びている。そして、アートマーケットにおいてもいまや「異文化」としてではなく、西洋美術と対等の立場にある作品として、アフリカのアートは大きな注目を集めている。
そんななか、マダガスカルのアートシーンを牽引し、素材と形状の然るべき特徴を探求し続けるアンドリアノメアリソアの日本初個展を、ぜひ会場で目撃してほしい。