KADOKAWAと所沢市の共同プロジェクトとして進められてきた「COOL JAPAN FOREST構想」。その拠点施設となる「ところざわサクラタウン」が、2020年7月17日にオープンする。
「COOL JAPAN FOREST構想」とは、「みどりと文化と産業が調和した地域づくり」を進める構想。その拠点施設「ところざわサクラタウン」は浄水所の跡地を利用したもので、文化施設と宿泊施設、書籍製造・物流工場、そしてKADOKWAのオフィスによって構成される、土地面積4万平米の巨大施設だ。
ランドマークは「角川武蔵野ミュージアム」
サクラタウンを構成するのは、「角川武蔵野ミュージアム」「EJアニメミュージアム」「ダ・ヴィンチストア」「ショップ&レストラン」「ジャパンパビリオン」「千人テラス&中央広場」「EJアニメホテル」「武蔵野坐令和神社」「所沢キャンパス」「書籍製造・物流工場」の10要素。
なかでもサクラタウンのランドマークとなるのが、全体に先んじて6月6日にプレオープンする「角川武蔵野ミュージアム」だ。
「角川武蔵野ミュージアム」の建築設計は隈研吾が担当。高さ40メートルの外壁には岩盤が使われており、多角形を組み合わせたデザインは「迷路的な地球」のイメージだという。このような石の建築はV&Aダンディー(スコットランド)でも見られるが、隈は同館について「これをさらにスケールアップしたもの」だと話す。
内部は、1000平米の「グランドギャラリー」、高さ8メートルの本棚に囲まれた「本棚劇場」、荒俣宏監修の「驚異の部屋」、松岡正剛監修の図書空間「エディットタウン」などで構成されており、3階には、日本のアニメを独自の切り口で紹介する「EJアニメミュージアム」が入る。「グランドギャラリー」のオープニングとなるのは、「隈研吾建築展」と「妖怪展」。
このミュージアムの館長を務めるのは、編集工学者・松岡正剛。ボードメンバーとして、荒俣宏、神野真吾、隈研吾が名を連ね、エグゼクティブ・プロデューサーはKADOKAWA取締役会長の角川歴彦が務める。
松岡は同館のコンセプトについて、「角川会長から図書館と博物館と美術館を一緒にしたいと伺った。一冊の本の中でもアートと哲学と自然史が一緒になることもある。それを拡大していけば可能になると考えた」と話す。同館では、この図書館部分を松岡が、博物館部分を荒俣が、美術館部分を神野が担当するという構想だ。
松岡はこう続ける。「メディアであれコンテンツであれ、全歴史をそこに包含することができる。このミュージアムはそういうものを組み立て、私たちが何を想像してきたのかを考え、全館を構成した。誰も見たことがないミュージアム。想像力や連想で世界と結びつく場所にしたい」。
「驚異の部屋」を監修する荒俣は「あらゆる驚き(ワンダー)が『非ワンダー』として入ってくる時代。ミュージアムはこのワンダーを活かしたい」としながら、「いままでの博物館が並べないような、虚実入り混じる、ワンダーを提供する」と意気込んだ。
アートを担当する神野は、その取り組みを「展覧会」「ラーニング」「地域コミュニティ」の3本柱で紹介。展覧会は「創造的な経験の場」としてとらえ、既存の枠にとらわれない、新たなテーマや取り組みに挑戦するという。またラーニングは展覧会と同じ重みを持つものとして取り組み、これらを通じてコミュニティの発展に貢献したいとしている。
なお角川は、美術や建築などの複数部門からなるヴェネチア・ビエンナーレに学んだという「武蔵野回廊国際芸術祭構想」を発表。美術、映画・動画、出版、教育の4部門を柱とする芸術祭構想があることを明らかにした。
このほかの注目施設
このミュージアム以外で注目したい施設が、「ジャパンパビリオン」と「EJアニメホテル」だ。
「ジャパンパビリオン」は、スタンディング時で1800名を収容する保ホールAと、シアター形式で200席を有するホールBからなるイベントホール。大規模なeスポーツ大会や2.5次元ミュージカル、ライブコンサート、映画上映などでの活用が期待される。
また「EJアニメホテル」では、アニメやゲーム、コミックなどのKADOKAWAの知的財産(IP)コンテンツを活用したホテルで、5タイプ全33部屋によって好きなIPと過ごせる環境を提供するという。
年間で延べ140〜180万人の来場者数を目指すという「ところざわサクラタウン」。数多くのコンテンツを抱えるKADOKAWAの新たな挑戦がどのように花開くのか、注目したい。