30以上のギャラリーが初出展。第7回「アート021 上海コンテンポラリー・アートフェア」をレポート

今年11月より、アート作品の輸入管理上の優遇措置を導入した「上海国際芸術貿易月間」がスタート。それを発起した「アート021 上海コンテンポラリー・アートフェア」は、11月7日〜10日に上海エキシビジョン・センターで開催される。今年第7回となるアート021の様子をレポートで紹介する。

 

会場風景

 2014年の第10回上海ビエンナーレより、11月の上海ではビエンナーレやアートフェア、数多くの展覧会が開催される「上海アートウィーク」が形成されてきた。今年11月から上海市政府は、アート作品の輸入管理上の優遇措置が導入された「上海国際芸術貿易月間」もスタート。その貿易月間の発足を働きかけた組織のひとつ、「アート021 上海コンテンポラリー・アートフェア」が、11月7日に上海エキシビジョン・センターで開幕した。

 今年第7回となるアート021には、18ヶ国57都市から111のギャラリーが集まり、30以上のギャラリーが初出展となる。メインホールでは、ガゴシアンやハウザー&ワース、デイヴィッド・ツヴィルナー、TINA KENG GALLERY、ShanghARTはそれぞれの所属アーティストのグループ展を行っている。

メインホールの展示風景

 今回の展示について、ハウザー&ワースは「近年世界各地で個展を開催した、地域のコレクターに紹介したいアーティストの作品を集めています」と話す。昨年11月に上海のQiao Spaceで個展を行ったマシュー・デイ・ジャクソンをはじめ、今年1月の台北當代と5月のJINGARTで個展形式で紹介したギュンター・フォルグ、松谷武判らによる作品が並ぶ。

ハウザー&ワースのブース。右は曾梵志の《Sky No.7》(2005)

 デイヴィッド・ツヴィルナーは、「取り扱っている代表的なアーティストを包括的に紹介し、ギャラリーの作品集のような展示です」と語る。今年のターナー賞にノミネートされたオスカー・ムリーリョや、4月より所属しているネイト・ロウマン、10月にオープンしたパリのスペースで個展を行っているレイモンド・ペティボーン、11月7日に上海当代芸術博物館で個展が開幕されたゴードン・マッタ=クラークの作品が集まっている。

デイヴィッド・ツヴィルナーのブース。左から、マンマ・アンダーソン《Behind the Curtain》(2014)、ネオ・ラオホ《Einbruch》(1999)

 “作品集”のような展示だけでなく、メインホールで個展を行っているギャラリーもいくつかある。ガレリア・コンティニュアでは、アニッシュ・カプーアによる4点のインスタレーション作品を展示。カプーアは、現在北京の中央美術学院美術館で中国初の大規模個展を開催しており、11日より紫禁城午門の外側にある太廟(タイビョウ)美術館での展示もスタートする。

ガレリア・コンティニュアのブース。左から《Monochrome(Yellow)》(2014)、《Untitled》(2015)

 ホワイト・キューブでは、イギリスのアーティスト、エディー・ピークによるポップアップ的な作品を展示。同ギャラリーの関係者は、「若者のカルチャーやトレンドを反映するエディーの作品は、アート021のスタイルとぴったりです」とコメントしている。サイモン・リー・ギャラリーでは、ベルリン拠点のカナダ人アーティスト、アンジェラ・ブロックによる彫刻とインスタレーションを紹介。2008年にグッゲンハイム美術館で展示された「Night Sky」シリーズも見ることができる。

ホワイト・キューブのブース

 ドームホールにあるKukje Galleryでは、ベルリンを拠点に活動しているアーティスト・デュオ、エルムグリーン&ドラッグセットによる「身体」をモチーフした一連の新作を展示。マイケル・エルムグリーンが「人間の生物学的進化を思わせる」と話した《Tailbone》(2019)は初日、上海のコレクターに13万5000ユーロ(約1630万円)の価格で購入された。11月より、エルムグリーン&ドラッグセットが2016年にニューヨークのロックフェラー・センターに展示した巨大なインスタレーション《Van Gogh’s Ear》は、香港のK11アートファンデーションで常設展示になるという。

Kukje Galleryのブース。手前は《Tailbone》(2019)

 今年初出展となるギャラリーのなかでは、上海に新しいスペースをオープンし、現在ジェームズ・タレルの個展を開催しているアルミネ・レッシュが、ピーター・ハーレイやジェニーブ・フィギス、ヴォーン・ スパンなど9人のアーティストを紹介。初日には、ジェニーブ・フィギスの《A lady of Fashion》(2019)やヴォーン・ スパンの《Marked Man(Seeing red)》(2019)は、2万3500ユーロ(約280万円)と4万4500ユーロ(約540万円)の価格で売却された。

アルミネ・レッシュのブース

 2017年よりウェストバンドに参加してきたロサンゼルスのデイヴィッド・コルダンスキー・ギャラリーは、今年初めてアート021に出展。初日には、フレッド・エバーズリーの彫刻《Untitled(parabolic lens)》(1974/2018)やエヴァン・ホロウェイの《Open Secret》(2019)、ウィル・ブーンの絵画《Oleum》(2019)を、それぞれ27万5000ドル(約3000万円)、9万5000ドル(約1000万円)、5万ドル(約550万円)の価格で販売した。

デイヴィッド・コルダンスキー・ギャラリーのブース

 イーストホールにあるフリードマン・ベンダには、ロン・アラッドやチョイ・ビュンホーン、ミーシャ・カーン、フェイ・トゥーグッドらによる家具が並ぶ。当初、KAWSがデザインした家具も展示される予定だったが、先月サザビーズ香港で開催されたオークションの出品リストにあった、毛沢東のポートレイト写真をパロディ化したKAWSの作品が中国で激しい抗議を受け、同ギャラリーは今回KAWSの作品を取り下げたという。

フリードマン・ベンダのブース
カーペンターズ・ワークショップ・ギャラリーのブース

 東京のTHE CLUBは、中小ギャラリーをサポートする「アプローチ」セクションに初めて参加。昨年銀座のスペースで個展を開催したジャッキー・サコッチオによる一連の絵画作品を展示。初日には、約半分の作品がアジアのコレクターに購入された。

 アート021の特徴について、THE CLUBのディレクター・山下有佳子は「若いギャラリーと作家をサポートしており、幅広いコレクター層に作品を見て気軽に買っていただけるのです」と語っている。加熱する上海のアートシーンでは欠かせない同フェアに、足を運んで目撃してほしい。

編集部

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