『美術手帖』2018年10月号では、上海アートシーンを特集する。
世界最大の人口とマーケット規模を有する中国。経済成長を背景に、近年の中国現代美術のマーケットは拡大傾向にあり、2017年の中国オークションの売上は世界第1位を記録した。こうした盛況の中心になっているのが、商業都市、上海だ。なかでも西岸(ウェストバンド)エリアには国内外からギャラリーが集まり、新たな美術館のオープンが相次いでいる。
本特集では、この西岸に近年ギャラリーををオープンしたギャラリストたちに取材。ShanghART、AIKE、オオタファインアーツなどに、なぜいま上海なのか、その魅力を聞いている。また、龍美術館やユズ・ミュージアムなど、上海のほとんどの美術館は、個人コレクターや企業によるもの。記事では若手コレクターと企業コレクターへのそれぞれインタビューを通して、中国コレクターの熱量を伝えている。
いっぽう、こうした活況を背景に、アーティストたちはどのような影響を受け制作しているのだろうか。特集巻頭では、上海を代表するアーティストとして、世界的に活躍する徐震(シュー・ジェン)、日本のサブカルの影響を強く受けている陸揚(ルー・ヤン)、そして90年代生まれの新星、胡為一(フー・ウェイイ)と、世代の異なる3作家にインタビュー。中国現代アートがどのように変化を遂げてきたのか、作家の声からその時代背景を浮き彫りにする。
このほかにも、1970年代から現代まで、中国の注目アーティストたちをファイル形式で紹介する記事や、中国の現代美術史を振り返る年表、上海アートスポットガイドまで、役立つ情報が満載。中国現代美術を総括的に紹介するような充実の内容。
アジアのアートの中心地としてますます注目の中国・上海アートシーンを知るための、保存版的な1冊となっている。
また第2特集では、SIDE COREと5名のアーティストがコラボレーションしたZINEが登場。全24ページにわたって「ある旅」の記録が収録されている。