ロシアの演出家レオニード・アニシモフ率いる東京ノーヴイ・レパートリーシアター。初の能楽堂連続公演が10月14日よりスタート

東洋と西洋の文化融合を目指す東京ノーヴイ・レパートリーシアターは、サン=テグジュペリ作『星の王子さま』を含む全5作品を、東京・中野の梅若能楽会館にて10月14日より公演する。この公演は、ロシアの古典演劇術「スタニスラフスキー・システム」の世界的権威であるレオニード・アニシモフによる、8ヶ月に渡る長期連続公演となる。

レオニード・アニシモフ

 注目の劇団「東京ノーヴイ・レパートリーシアター」が、東京・中野の梅若能学院会館を会場に、2019年10月から20年5月にわたる長期連続公演を行う。

 劇団を率いる演出家、レオニード・アニシモフは「日本国が持つ文化、日本民族が持つ資質がいつか世界を変えることになる」と語る。アニシモフは100年後の世界を見据え、神仏習合に見られるような日本の和の精神が、21世紀において世界を変える鍵となると信じ、2003年から日本を拠点に舞台活動を続けている。

 アニシモフはここ数年、東西の舞台芸術を統合すべく、西洋の古典的演技術「スタニスラフスキー・システム」と、世阿弥の『風姿花伝』の舞台哲学を融合させ、世界に類を見ない演出方法による作品づくりに挑戦してきた。今回の能楽堂連続公演でも、『星の王子さま』やギリシャ悲劇といった海外作品に、能や歌舞伎、神楽、詩吟、狂言などの日本的要素を取り入れた演出を試みる。

『古事記』公演より

 「真実だけが人を癒し、治療することができる」とは、ロシアの劇作家、アントン・チェーホフによる言葉だが、アニシモフは「真実の演劇を創造するには、能楽堂は世界最高の舞台空間である」と語る。俳優の無駄な動きや発声、過剰な音響や照明がそぐわない能楽堂では、抑制されたシンプルな表現こそが調和のある舞台につながる。東京ノーヴイ・レパートリーシアターは、これまでにも、能楽堂において儀式劇『古事記』を上演、その演出スタイルでロシア公演を成功させ、海外メディアで大きな話題となった。

 古代ギリシャにおいて演劇は「人間の心の病を治療する手段」だったという。東京ノーヴイ・レパートリーシアターは演劇本来の目的と役割を果たすべく、独自の活動を続けている。過剰な情報量と目紛しく変化する社会の流れのなか、置いてきぼりにされている「心」を調整する場をつくることを目指している。

『アンティゴネー』公演より

 今回の連続公演では、サン=テグジュペリ『星の王子さま』をオープニング作品に、ソポクレス『アンティゴネー』、ゴーリキー『どん底、』、エウリピデス『メデイア』、ブレヒト『コーカサスの白墨の輪』を上演する。いずれも海外作品であるが、能や歌舞伎、狂言など、日本伝統芸能のエッセンスを取り入れた独自の演出が施される。

『アンティゴネー』公演より

 日本では希少な、同じ作品を長期間に渡って上演し続ける「レパートリーシステム」を採用する東京ノーヴイ・レパートリーシアター。この劇団ならではの洗練された舞台の能楽堂連続公演を、ぜひ体験してみて欲しい。

編集部

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