テキスタイルの先にある立体表現へ。ファイバーアートの第一人者・草間喆雄の個展が京都・艸居で開催

ファイバーアートの黎明期からテキスタイルアートを手がけ、国内外で高く評価される草間喆雄(くさま てつお)の個展が、京都・現代美術艸居で6月30日まで開催中だ。ファイバーアートの表現方法の可能性を押し広げ、空間そのものの再構築に挑む草間の新作20点を見ることができる。

草間喆雄 Flow-V 2018

 ファイバーアートとは、繊維素材を用いる作品のこと。織物や染物であるテキスタイルアートがより日常的な用途性や平面性を保つのに対して、ファイバーアートは用途性から解放され、また金属や紙など様々な素材を組み合わせられることもある。

 そんなファイバーアートの黎明期から作品を制作してきたのが草間喆雄(てつお)だ。草間は1946年東京都生まれ。ユタ大学芸術学部助教授、成安女子短期大学教授、岡山県立大学教授を歴任し、現在は岡山県立大学名誉教授。日本国内のみならず、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で開催された「ジャパニーズスタジオクラフト」(1995)など海外での展覧会に多数参加しているほか、76年には米国芸術基金(NEA)クラフトマンフェロウシップグラント、13年に紺綬褒章など、国内外で様々な評価を得てきた。その作品はチューリッヒ・ベルリブ美術館、東京国立近代美術館工芸館、国立国際美術館、京都市立美術館など国内外の美術館でコレクションされている。

 50〜60年代の欧州で、テキスタイルアートは用途性から脱却した新しい潮流に乗り始めた。その流れはアメリカへと広がり、70年代にファイバーアートとして新しい展開を迎える。その頃に武蔵野美術大学を卒業した草間は、レノア・トーニーなど革新的な作家の動向に触れ渡米を決意、ファイバーアートの黎明期を体験してきた。帰国後は空間性のある立体的造形や、平面と立体を横断する作品によってファイバーアートの表現の可能性を追求してきた。

 

 また、美術館とは構造やスケールなどが異なる公共空間への作品の展開にも力を入れてきた草間。鑑賞者が空間構造を改めて再認識したり、空間そのものを再構築するような大胆な作品が、愛知県新文化会館や墨田区役所などの場所で展示されている。

 ファイバーアートによって空間の構成をも変えることに挑む草間。その新作20点を京都・艸居の個展で見ることができる。

 近年、より立体的な表現を求めているという草間は、樹脂やステンレスに直接糸を巻きつける技法を用いて「OPTICAL ILLUSION」というコンセンプトのもと作品を制作。黒色アクリル板の一端から生え出てきたような色とりどりのファイバーが、もう一端へと向けて、うねり、捻られながら流れを生み、単色の線でありながら多彩な面を構成し、角度によって様々な表情を見せる、緊張感のある造形作品群だ。

 国内外で高く評価されてきた草間の、新たな挑戦を見ることのできる展覧会。様々な角度から新作を堪能したい。

編集部

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