石山哲也は1973年埼玉県生まれ、滋賀の信楽を拠点に中国の景徳鎮や香港、台湾、インドなどで活動し、象嵌、金銀彩、ガラスを水面に見立てた「水面晶」シリーズなど、高い陶芸技術を用いた作品を制作、発表してきた。
本展は、自ら発掘調査に携わるほど古美術品への情熱を持つ石山が、その関わりのなかで感じた古美術品との埋まらない距離から着想を得たもの。古美術品の制作者が作品に込めた生活環境・宗教観・哲学などは、鑑賞者が手にするときには消失し、単なる美術品になってしまう。石山は今回作品を通じて、その距離を意識したうえでも魅了し続ける、曖昧で不確かな古美術に潜む「アイコン」を探求する。
展示される立体作品の多くは、誰もが博物館で目にしたことのあるような歴史的な作品をモチーフにしているが、そのシルエットは摩耗し、金彩された凹凸のある表面に覆われ、本来の細部を失った姿になっている。しかしデフォルメされても、その作品は鑑賞者に慣れ親しんだ「アイコン」のイメージを喚起させるものとなっている。